「ビッグデータを活用した自動車保険のサービスを徐々に広げることができている」。こう手ごたえを語るのは、損害保険ジャパン日本興亜リテール商品業務部企画・収支グループの杉本光祐リーダーだ。同社では、2015年3月から法人顧客に対して、ドライブレコーダーを配布している。その企業の従業員の運転を評価し、企業と従業員にフィードバックするサービス「スマイリングロード」を始めた。

 レコーダーに記録される加速度などのビッグデータから、独自に安全運転の「基準」を設定している。ドライバーがそれを超えるような運転をすると、企業にリアルタイムでその情報が届く仕組みだ。安全運転を心がけているドライバーには、それが本人にも伝わる。運転のランキングが付いたり、商品に応募できたりするなど、モチベーションのアップにつながるような仕掛けも付与した。

損害保険ジャパン日本興亜によるスマートフォン用アプリ「ポータブルスマイリングロード」の画面。 ナビタイムジャパンのカーナビゲーション機能が搭載されており、自社のビッグデータを基に運転機能も評価する。 現在は、同社の自動車保険契約者しか利用できないが、8月からは契約者以外にも サービスを広げる

 スマイリングロードは、同社の自動車保険に加入していなくても、10台以上を保有していれば導入できる。サービス開始からわずか9カ月で、約250社の1万台以上に拡大した。さらに、導入前に比べると、自動車事故は2割程度削減できるようになった。

 そして2016年1月、このサービスを個人向けに拡充した。スマートフォン向けアプリ「ポータブルスマイリングロード」として、同社の自動車保険に加入する個人が無料で利用できるようにしたのだ。運転の評価は、加入者のスマートフォンで、GPSの移動距離や加速度などの情報から判断する。明らかに衝突と思われる挙動がみられれば、画面に事故対応受付の連絡先が表示される仕組みとなっている。ナビタイムジャパン(東京都港区)から提供された独自のカーナビゲーションシステムを入れているのも特徴だ。

 一般に損害保険と言えば、保険会社と契約者が接点を持つのは、契約時と事故発生時ぐらい。「事故を起こさないドライバーにとっては、高い掛け金を払っているだけという意識になりがち。そうした顧客がサービスを受けられて、接点を持てるように目指している」。同社のリテール商品業務部企画・収支グループの荒井純一課長代理は説明する。

 加入者の事故が減れば、保険会社としても支払保険金が減るので収益に直結する。一方の加入者にとっても、次回契約時に保険料の割引率が増えるのでメリットは大きい。データの活用によって顧客満足度を高め、それが結果的に保険の契約継続率につながることを狙っている。

 導入からわずか2カ月ほどで、ポータブルスマイリングロードのアプリのダウンロード数は2万を超えた。今年8月から、同社の自動車保険に加入していない個人向けにもサービスを展開していく予定だ。損保ジャパン日本興亜が蓄積してきた事故多発地点の情報をもとに、そこをできるだけ回避して目的地に到着できる仕組みも導入する。他社の自動車保険に加入している個人にとっては、万が一事故が起きてしまった場合のサービスについてメリットはない。そこからどのように顧客を誘引するのかが次の課題になりそうだ。