伝える「順番」を変えることで物語を紡ぎ出す

 日本コカ・コーラの「い・ろ・は・す」というミネラルウォーターの成功は、まさにゴールデンサークルの考え方に沿っている例でしょう。

 水は、コモディティーの最たるものですが、「い・ろ・は・す」は若い人の間で非常に熱狂的に支持されました。それはどうしてかというと、環境にやさしいということをうまく伝えたからです。

 どうして環境にいいのかというと、今までのペットボトルに比べて材料の使用量が大幅に少なくて、石油の使用量を減らせるので、地球環境にやさしい。おまけに、薄くて柔らかいので、飲み終わったらくしゃくしゃに圧縮できるから、容器回収のスペースを取らない。だから我々のこの製品は非常にいいんですよということで、それが若者に熱狂的な支持を得た。水なのに指名買いされるようになった。

 それを違う視点から捉えると、「うちの水はほかの水と違います」というのは、これはWhatから入るやり方で、普通の製品差別化です。「い・ろ・は・す」はそうではなくて、「我々は地球にやさしいことをしている」と、Whyから始めた。共感する人は一緒に買ってくださいというアプローチをした。「地球は大変なことになっています。だから我々も地球環境を守るために努力したい」ということで、こういう商品を作りましたというようなマーケティングをした。

 順番を変えただけじゃないかと言われるとその通りです。でも、それが重要なんです。

つい人に話したくなる「あり得そうな話」

 企業に対する顧客の認識がどのように形成されるかということに関して、よく考えることは欠かせないと思います。

 ノードストロームというアメリカの百貨店には、タイタニックのルイ・ヴィトンと同じように、伝説になっている逸話がたくさんあります。

 例えば、お客さんがノードストロームでは扱っていない商品をご所望されたときに、店員は「承知しました」「ちょっと探してきます」と言って、よその店まで行って買ってきてお客さんに販売したそうです。さらには、ノードストロームに自動車タイヤを転がしてやってきたお客さんが、「サイズを間違えたから返品したい」と言ったので、それに応じたそうなのですが、実はノードストロームではタイヤなんて扱っていなかったという話もあります。

 これらの物語は、真偽は分かりませんが、ノードストロームの顧客本位の姿勢などに関するイメージを膨らませてくれます。ノードストロームがそのような対応を強みにしていることは真実だと思えてきます。

 顧客の認識がどういうふうに形成されるのかということを理解すれば、印象的で、何となく人に伝えたくなるストーリーというのは、ブランド形成の重要なファクターになることがわかると思います。

 「物語」をうまくテコにすることは、競争戦略上の重要なテーマです。

『物語戦略』発刊記念トークイベント

日経BP社は6月14日(火)夜、東京・早稲田の早稲田大学早稲田キャンパス内で無料セミナー「物語戦略で勝つ」を開催します。

早稲田大学ビジネススクールの内田和成教授ほか、『物語戦略』の監修者・著者が登壇し、シンボリック・ストーリーを武器にする戦い方を解説します。皆様のご応募をお待ちします。

お申し込みはこちらから。

■日時:2016年6月14日(火) 19:00~21:00(18:30開場)
■会場:早稲田大学 早稲田キャンパス 11号館501教室
    (東京都新宿区西早稲田1-6-1)
■参加費:無料(事前登録制)
■定員:約200名

著者:内田和成 早稲田大学ビジネススクール教授
東京大学工学部卒業。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。日本航空を経て、1985年ボストンコンサルティンググループ(BCG)入社。2000年6月から2004年12月までBCG日本代表を務める。2006年から現職。



著者:岩井琢磨 コミュニケーション戦略プランナー
早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了(MBA)。広告会社に入社後、インストア・プランナー、クリエイティブ・ディレクター、ブランドコンサルタントなどを経て現職。製造業、流通サービス業界を中心に、企業ブランド戦略および企業コミュニケーション戦略の策定・実行支援のプロジェクトを数多く手がけている。



著者:牧口松二 マーケティング・ディレクター
早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了(MBA)。広告会社に入社後、ブランドコンサルティング会社の創立メンバーに加わり執行役員に就任。その後現職。製造業、流通業、店舗型サービス業界を中心に、事業戦略、ブランド戦略の策定・実行支援、サービスクオリティマネジメントなどのプロジェクトを数多く手がけている。