葬儀会社をビッグデータで分析してみた(写真:PIXTA)
150万社のビッグデータを活用し、新しい切り口や問題意識からこれまで知られなかった日本経済の姿を明らかにする――。今回テーマに選んだのは葬儀会社。業歴や企業規模などさまざまな角度から分析を試みた。
対象にした葬儀会社は2430社。互助会などを含むほか、葬儀場のほかに結婚式場などを運営しているケースがある。
まず、社歴は平均でみた場合が40.3年、中央値が35年となった。最も社歴が長いのは江戸時代創業の392年。次いで328年、217年と続く。
社歴(年)と社数(社)の分布(社歴150年までを掲載)
社歴の長い会社もあるものの、分布をみると1982年以降の創業が約5割を占めている。詳しくみると、4分の1は2000年代に入ってから事業をスタートしていることがわかった。「伝統産業とみなされがちだが、新規参入が多いのが特徴といえる」(山本准教授)
葬儀はひと昔前まで自宅で行う人が多かったが、最近はセレモニーホールで行うことが増えている。「終活」意識の高まりや家族葬の増加など葬儀形態も多様化。住宅事情や社会情勢の変化などが、この業界への新規参入を加速している。許認可事業でないことも大きい。「一昔前に比べると、それぞれのサービスの価格の透明性が高まっているといわれ、それが参入しやすさに繋がっている面もある」(東京商工リサーチの進拓治市場調査部長)
従業員6人までが5割を占める
次いで規模をまず従業員数でみてみよう。分布をみると5割が6人までとなっており、規模の小さい会社が目立つ。15人まででみると、4社のうち3社を占める。
従業員数(人)と社数(社)の分布(従業員数50人までを掲載)
そんななかにも500人以上の会社が8社ある。このうち2社は1000人を超える。社員数の上位8社中6社は互助会となっている。
売上高でみた場合、5割が約1億1000万円までとなっている。売上高は最大が約511億円。以降約411億円、385億円と続く。売上高100億円以上の企業は30社、同50億円以上は51社。上位10社中7社が互助会、上位10社中5社は結婚式場も手がけている。
売上高(億円)と社数(社)の分布(売上高20億円までを掲載)
「小規模企業が非常に多いのがこの業界の特徴」(山本准教授)。葬儀のあり方には地域性がある。また、いつ葬儀をするのか事前にはわからないなど、大規模化しにくい背景がある。葬儀自体が小規模化しているなど、社会構造の変化も重なる。
次いで利益率について統計上のいわゆる「外れ値」を除いて分析すると、5割が2.65%以下となった。
利益率を業歴との関係性をみると、創業から10年ほどまでばらつきが目立つ。しかしその後はばらつきが減っていく。事業を始めてから50年ほどで利益率はピークを迎え、その後徐々に減少していく傾向がある。
この結果について、「地域に根付きながら事業を継続するいわゆる老舗企業が一定数存在することを示唆している」と山本准教授はみている。
利益率を互助会とそれ以外の葬儀会社に分けて中央値を比較した場合、互助会が3.33%でそれ以外が2.54%と互助会の優位が目立つ。
少子高齢化を反映する
一方で人生のもう1つのセレモニーである結婚関連はどうか。結婚式場、結婚相談の中央値はそれぞれ0.76%と1.33%で、葬儀関連に比べると低い。
次いで2002年度から05、09、13、17年度までの時系列で中央値の変化を調べると興味深いことがわかる。
4業態の年度別の利益率中央値
(注)年度は左から2002、05、09、13、17年度
結婚式場は一時増加に転じたものの、減少基調が続く。一方、互助会、互助会を除く葬儀業は増加基調にある。これはそのまま少子高齢化の進展という社会構造の変化を受けたものといえそうだ。
今後も新規参入が続く可能性がある
調査結果について、山本准教授は「葬儀は様々な要素が関係するため、小規模な企業が独自性を発揮しやすい。その分、今後も新規参入が続く可能性がある」とみている。
東京商工リサーチの進部長は「今後も需要増加が見込まれる一方、新規参入組による透明性の高い価格設定や顧客の生前からの囲い込みなど、むしろ競争は激しくなる」と話している。
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