居心地の良い雰囲気の中、ゆったりとした時間を過ごしながら、来店客が仲間や店員と会話を楽しめる。これが、「中食」にはない、外食ならではの喜びだ。

 コメダが展開する「コメダ珈琲店」は、お客にこうした時間を提供すべく先駆的に取り組んできたコーヒーチェーン。ドトールコーヒーやスターバックスコーヒーなどセルフ式のカフェが全盛となる中でも、コメダ珈琲店は注文したメニューを客席まで運ぶ「フルサービス」を1968年の創業当初から変えていない。これが逆にシニア層らの根強い支持を集めている。

時代がコメダに追い付く

コメダの臼井興胤社長は「創業時から変わらず提供するサービスに、時代のニーズがピッタリ合ってきた」と話す(写真:大槻純一)

 朝にコメダの店舗をのぞくと、毎朝決まった場所に腰を下ろす客から軽装の客まで、様々な常連客の姿を見ることができる。平均滞在時間は約1時間にも上る。

 コメダを率いるのは2013年7月に社長に就任した臼井興胤氏だ。臼井社長はコメダ創業者の加藤太郎氏のアドバイスも受けながら、経営に当たってきた。「特別な秘訣はない。これまでのサービスを変えず、地道にこつこつと続けてきた結果。時代がコメダに追い付いてきた」と人気の理由を分析する。

 国内で外食産業が発展し始めたのは、日本経済が高成長を続けた1970年代。「早メシ」という言葉が象徴するように、当時は仕事の合間に短時間で効率良くお腹を満たすことが優先された。また、メニューの調理から提供までの効率的な作業、マニュアル通りの接客などを武器とした米国のチェーンビジネスが日本で一気に普及したことも大きかった。

 だがバブル崩壊後、日本経済は一転して長期低迷が続いた。その中で消費者は飲食店に、「居心地の良い空間や語らいの場所」という、チェーン店拡大の一方でそぎ落とされてきた役割を再び求めるようになった。それが、坂東太郎やコメダが根強い支持を集め続ける理由だろう。

 坂東太郎の青谷会長は「外食産業は『競争』の時代から、今後は『共創』の時代になる」と見通す。消費者の意向を聞きながら、喜ぶものを外食企業と消費者が共に創り上げる――。

 企業としては、コストをギリギリまで絞るなど効率性を優先しながら利益拡大を目指すのは当然だろう。ただし、効率最優先の競争の先に待つのは、外食ならではの喜びを消費者に提供できなくなり、訴求できるのが価格だけ――といった飲食店の増殖ではないだろうか。

 提供する料理や顧客との会話に工夫を凝らし、顧客の満足度を高める新たな価値を、切磋琢磨しながら創り上げる。これが、飲食店経営の醍醐味だろう。従来のチェーン理論から一歩距離を置いた新しい潮流の飲食店が、次々と誕生することを期待したい。

当連載は、日経ビジネス2016年5月16日号特集「外食崩壊 ~賞味期限切れのチェーン店~」との連動企画です。あわせてこちらもご覧ください。