もう1つは「お客の嗜好の変化に合ったメニュー開発を恒常的にできるかどうか」です。お客の嗜好は常に変化しますが、組織が大きくなればなるほど、その声を吸い上げるのが難しくなるし、メニューを開発してそれを均一な品質で全てのレストランで提供するのが難しい。逆に、それができた企業は今後伸びると言えます。
チェーンの強み・弱みを意識し経営を
大手外食チェーンの従来の強みが弱みに転じています。変化にどう対応すれば良いですか。
杉本:チェーンの強みと弱み・課題を常に意識しながら経営できるかが一番のポイントです。
私の認識では、強みはまず安心感のあるブランドを作れることです。消費者は、見たことがないブランドには入りたがらないものです。2つ目に店舗数を生かして原材料を安く仕入れられる、規模の経済が働きます。3つ目に経営規模を生かして稼げば豊富な資金を手にできる。その資金を使って店舗を改装し、設備投資もできます。
一方で弱みや課題は、規模の経済を働かせるために運営やサービスをある程度はシステム化、マニュアル化するので、お客の嗜好の変化に迅速に対応できなくなる。それをカバーするには、各店の店長がお客の嗜好の変化を感じ、それに見合ったサービスをして、自分の店舗のように経営することです。なかなかいいとこ取りはできません。
チェーンが悪いという意見もありますが、そうではなく、経営している企業の意識が薄れてくると、うまく回らなくなるのではないでしょうか。消費者の変化は早く、トップが常に変化を感じるのはなかなか難しいです。
外食は今後、どの業態も伸びますか。
杉本:優劣が出るでしょう。ハンバーガー、牛丼などのファストフードがなかなか難しいところです。中食と同じ「プロダクトドリブン」の業界である上、中食が優れた商品開発を続けているため、市場規模の幾らかは持っていかれるでしょう。ハンバーガー、牛丼などの商品はお客から飽きられることがあるので、いかにコアの商品から派生して、消費者の心をとらえるメニューを開発できるかにかかっています。
レストランは、会計時に他社でいう「お値段以上」の感覚をお客が持って店を出ることができるかどうかだと思います。
成長の足がかりとして、海外進出も有効な選択肢でしょう。日本食ブームがあり海外はとても有望な市場で、日本の外食店を海外に持っていくのは、大きなチャンスがあります。日本では後発で、海外に出て成功したラーメン店「味千ラーメン」のような事例もあります。
今後の外食産業で御社の役割は。
杉本:ご紹介したように、外食企業の経営陣はメニュー開発、サービスの向上、人材育成などやるべきことが山ほどあります。これらの業務に優先順位をつけ、データを整理して、経営判断しやすいようにすることが一番の役割だと考えています。
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