東京大学金融教育研究センターは4~7月、「日本経済を支えるファミリービジネス――地方創生の主役」をキャピタル・アセット・プランニングとの共催セミナーとして実施。東大で同族経営についてのセミナーはこれまでほとんどなかったこともあり、注目を集めた。プログラムアドバイザーは柳川範之教授。

 同セミナーで登壇した一人が、星野リゾートの星野佳路代表だ。経営学の教科書を生かす経営で知られる同社にあって、星野代表は事業をあくまでもファミリービジネスととらえているという。同セミナーでの講演の一部を再録する。

星野氏は1960年生まれ。慶応大学卒業。米国コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。91年に現在の星野リゾートのトップに就任。

 私の家族は1914年に軽井沢に星野温泉という旅館をつくり、そこで温泉旅館を運営してきた。1991年に父からホテルを引き継いだ4代目の私は、星野リゾートをファミリービジネスととらえている。

 ファミリービジネスは調べれば調べるほどほかの企業と違う。欧米の大学、例えばハーバードなどはこういうマネジメントを体系化するのが上手で、これまでの研究から同族企業のほうが実は非同族企業よりも業績がよいことが証明されている。

 なぜ同族企業が強いのか、私は「同族企業には30年ごとに自動相続システムがビルドインされている」からだととらえている。親から子に継ぐ場合、世代交代によって30年ごとに大きなビジネス転換が起こる。これが強みになっているのではないか。

 一方、経営の質という点ではどうか。大手で上場する非同族企業とどこにでもある普通の同族企業を比べたら、もちろん非同族企業のほうが同族企業よりもいい。私はいつもこうした非同族企業の経営は「一流」だが、同族企業は「オレ流」だと言っている。

同族経営はMPOと氏神がつく

 どういうことか。大手で上場する非同族企業にはMBA取得者が多数在籍している。これに対して、同族はMPO(ママ、パパの思い付き)経営である。非同族企業がグローバル展開なら同族はどローカルだし、投資家やコンサルタントがつく非同族企業に対し、同族企業には親戚と地元の氏神がつく。同族企業は日本のGDPの小さくない部分を占めるにもかかわらず、これだけプリミティブ経営をしているのは驚きでもある。

 しかし、その分同族企業の経営は改善する余地がある。既にさまざまな手を尽くしている一流で大手の非同族企業においてその業績を伸ばすのはたいへんだが、これだけプリミティブな同族企業ならば、利益10倍も可能な気すらする。つまりそれだけ大きな可能性があるのだ。

 だからこそ、同族経営は「思い付き」を脱し、ファミリービジネスに合ったセオリーやメソッドを確立しなくてはいけない。

 日本の大学でも2世、3世が学べる場をつくることが重要だと私は考えている。私はよく「事業を継ぐ者は業績を伸ばす責任がある」と言っているが、日本経済の大きな部分を占める以上、その責任は通常思われているよりも大きいのではないか。

 振り返ると私の場合、家業を成長させるうえでのモチベーションは危機感だった。創業地である軽井沢にいつか外資系の有力ホテルチェーンが入ってくると考えたとき、先代までのやり方はいずれ続かなくなると思った。だから事業を伸ばすことを強く意識してきた。