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 固定資産増加率でみると、同族企業のうち創業者が経営する会社は危機を前にしたときに一気に設備投資を絞り込む姿が明らかになった(図2)。これに対し、非同族企業はショックが来た後も設備投資を増やしている。同族企業のうち、創業者以外が経営する会社も増加傾向にあるが、その比率は非同族企業に比べると一貫して低い。

 これらのデータから読み取れるのは経営戦略の大きな違いだ。同族企業がショックに直面したとき投資の削減を優先する一方で雇用を守るのに対し、非同族企業は人件費から切り込み、設備投資の絞り込みは後回しにする戦略をとる。

 では、カネの面ではどんな違いがあるだろうか。長期借入金の比率、現金保有の比率から分析すると、興味深い違いがあることがわかった。

手金重視の同族、長期借り入れを優先する非同族

 同族企業はショックの後、創業者が経営する会社を中心に現金の保有比率を抑える傾向がある(図3)。

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 そこからは自己資金を取り崩して会社を支えようとする姿が浮かび上がる。一方、非同族企業で目立つのは長期借入金比率がショックを経て大きく伸びていることだ(図4)。非同族企業は危機を前に手金でなく、外部資金によって危機を乗り切ろうとしている。

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 人、モノ、カネの戦略の違いについて、沈准教授は「同族企業と非同族企業の経営者のトップ在籍年数から考えるとわかりやすい」とみている。

 どういうことか。同族企業はファミリーが何十年もトップの座にいることが多い分、長期的な視点から時間をかけて人材を守り育てやすい面がある。短期的な業績に振り回されないため、危機の時にはまず設備投資などを抑える方向に舵を切る。借り入れの増加は家族にとって重荷になりかねないため、手元資金をまず取り崩すことから始める。

 一方、非同族企業はトップが数年単位で交代するのが一般的だ。このため、育成に時間のかかるヒューマンキャピタルを抑える一方、比較的短期間で利益を出しやすい設備投資を優先する。そのためには長期の借り入れもいとわない戦略をとる。

 忽那教授、沈准教授は今後、リーマン・ショックについても本格的な分析を行う。行動原理の違いが業績にどんな影響を及ぼしているかについても研究を進め、長期的な視点についての考察を深める考えだ。

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