米西海岸で話題の「植物肉バーガー」の味は、“ほぼ肉”のような食感と風味だった。だが、「フェイク(偽)フード」は植物肉だけではない。「植物卵」で作ったマヨネーズなども、既に米国の大手スーパーの店頭に並んでいる。地球を救うことを目指した商品というが、おいしいのか?

 「植物肉」を開発している米ビヨンド・ミート(正式社名はサベージ・リバー)や米インポッシブル・フーズと並び、この分野の成功事例と言われてきたのが、米ハンプトン・クリークだ。同社は植物性タンパク質を使い、マヨネーズやクッキーなど卵を使った製品の代替品を「Just(ジャスト)」というブランドで展開している。いわば「植物卵」製品の開発会社で、マヨネーズを販売している既存の大手メーカーや卵業界から反発を受けたり、アグレッシブなマーケティング姿勢が物議を呼んだりと、何かと注目を集める存在だ。その本社を訪れた。

 かつて、サンフランシスコ名物のクッキー工場だったビルを改装したというオフィスは、一風変わっていた。仕切りがなく開放的な職場は、シリコンバレーの企業を彷彿とさせる。だが、奥には様々な容器が並ぶキッチンがあり、別の一角には製薬会社が使う実験装置が複数台、並んでいる。まるで、IT、食品、製薬という3つの産業を融合したかのようなオフィスである。

 創業者でCEO(最高経営責任者)のジョシュ・テトリック氏は、学生時代にアフリカを放浪し、貧困や地球温暖化といった社会課題の解決を志したという。だが、テトリック氏は失望した。「NPO(非営利組織)にも関わりましたが、スピードが遅く、インパクトも小さかった。そのため、自分で事業を起こし、ビジネスを通じて社会課題の解決を目指すことにしたのです」とテトリック氏。事業として選んだのが、健康や環境など多くの社会課題と深く結びついているにも関わらず、イノベーションが停滞していた食の分野だった。

ハンプトン・クリーク創業者のジョシュ・テトリックCEO(写真:林幸一郎)

 「既存の食料システムには大企業の既得権や政府の補助金などが絡み、変革は容易ではありません。だからゼロからシステムを再構築しようと考えました」とテトリック氏は話す。手法はビヨンド・ミートなどと同様、既存の食品の分子構造を解析し、より健康で環境に優しい成分で再構成することだ。

 目を付けたのが、鶏卵だった。動物愛護の観点から工業化した養鶏に批判が強まり、放し飼いにした鶏から卵をとる動きが広がっている。それに伴い価格が上昇。鶏卵と同様の機能を発揮する植物性タンパク質を使った商品を開発できれば、競争力を発揮できると考えた。

 既に、同社の製品は米ウォルマート・ストアーズを含む主要大手スーパー各店舗で販売されているほか、約3300の公立学校や500以上の大学の食堂などで採用。テトリック氏は、「おいしい上に価格も手頃。もはやベジタリアン向けのニッチ商品とは言えません」と強調する。ライバルは、英蘭ユニリーバやスイスのネスレ、米クラフト・ハインツ・カンパニーといった巨大企業だ。

 果たして、その味やいかに。まず、試したのが、卵の代わりにエンドウ豆の植物性タンパク質から作られたマヨネーズである。キュウリやパプリカなどの野菜につけて食べてみた。