レストランでも植物ハンバーガーが人気メニューに

 取材場所をロサンゼルスからサンフランシスコに移動し、今度はもう一つの植物肉バーガー、インポッシブル・バーガーを販売しているレストランをランチタイムに訪れた。サンフランシスコ市内にある「コックスコム」は、ベジタリアン向けの料理だけを提供しているレストランではない。牡蠣や肉などをシェフこだわりのレシピで提供する人気店だ。

インポッシブル・バーガーを提供しているサンフランシスコ市内のレストラン「コックスコム」(写真:林幸一郎)
インポッシブル・バーガーを提供しているサンフランシスコ市内のレストラン「コックスコム」(写真:林幸一郎)

 まだ、植物肉のパティの供給体制に制約があるためだろうか、インポッシブル・バーガーを提供しているのはランチのみ。ランチタイムでは多くの客がインポッシブル・バーガーを注文しており、明らかに人気メニューの一つになっていた。店内をざっと見渡しただけでも、4人がけのテーブル席では、ほぼ誰かがインポッシブル・バーガーを頼んでいたようだ。

 インポッシブル・バーガーの値段は19ドルと高めで、高級グルメバーガーといったところだ。メニューには、「植物肉」で作ったハンバーガーであることは記載されていない。つまり、ベジタリアン向けということではなく、あくまでも「味」で勝負しようという姿勢がうかがえる。

 注文を取りに来た店員には、「卵を乗せますか」と聞かれたが、植物肉の味が分かりにくくなるだろうと考え、乗せないことにした(1ページ目の写真は卵あり)。10分ほど待っただろうか。店員が運んできたハンバーガーは、予想以上にボリュームがあった。

 食べてみた最初の印象は、ビヨンド・バーガーよりも少し歯ごたえがあった。焼き方の具合なのか、植物肉の構造によるものなのか、食べただけでは分からないが、インポッシブル・バーガーもまた、ほぼ肉の味だ。ビヨンド・ミートとは異なり、「ヘム」という肉特有の風味を出す成分を含んでいる、という先入観があるからか、より肉らしい味と食感に思えた。ただし、記者自身が微妙な差を判別できるほどの舌を持っているとの自信はないのだが。

 食べ終わると、店員がインポッシブル・バーガーのリーフレットを持ってきてくれた。食べた後に、植物から作られた偽物の「肉」であることが、種明かしされるわけだ。ある店員は「インポッシブル・バーガーを目当てに来店する客は少なくないわ。みんな、植物肉だと分かっていて注文しているみたい」と話す。おそらく、しっかりとリピーターを獲得しているのだろう。

次ページ 食のトレンドは「原点回帰」と「再構成」