「トノサマバッタの酸味に、この虫の一生を感じる」

 記者の目の前に置かれたのは2つのタッパー。取材のために、昆虫を使って料理をしてきてくれたという。そこまで言われると、昆虫嫌いの私も断ることができない。

 「まずはこっちの方が食べやすいかな」という言葉とともに、篠原さんが蓋を開けたタッパーの中には、乳白色のプリンのようなものが入っている。よく見ると、バニラビーンズのような小さな黒い粒が全体に混じっている。見た目だけでは昆虫が入っているとは気づかない。

 「これは何ですか?」(記者)

 「まあ、まずは食べてみてください」(篠原さん)

 何が入っているか知らされないまま、箸で小指の先ほどの量をすくい、一口食べてみた。少し温くなっていたので、生クリーム特有のまったりとした風味が舌に広がり、ほんのりと紅茶の風味が香る。普通の食べ物と思いながら、味わっていると、最後の方に普通のスイーツにはない酸味を感じた。

 記者の怪訝な表情を察知したのだろう。篠原さんは「これはトノサマバッタの粉末を混ぜ込んだパンナコッタです」と打ち明けてくれた。

トノサマバッタの粉末が入ったパンナコッタ
トノサマバッタの粉末が入ったパンナコッタ

 黒い粒はすべてバッタ粉末だった。記者が感じた酸味の正体は草。バッタは草を食べて成長しており、餌として食べた草の風味が酸味としてパンナコッタの隠し味となっていたのだ。

 「この酸味に、バッタが草を食べて生きていたんだという一生を感じることができませんか。これが昆虫食の醍醐味の一つです」(篠原さん)

 続いて、蓋が開かれたタッパーには衝撃的な光景が広がっていた。長さ4cmほどのミールワーム(ゴミムシダマシの幼虫)がそのままの姿で入っていたのだ。

 「ミールワームのキャラメリゼです」(篠原さん)

 あまりの衝撃に篠原さんの説明が耳に入ってこない。先ほどのパンナコッタと比べ、幼虫そのままの姿で今にも動き出しそうだ。思わず箸を持つ手が震えた。しかし、女は度胸、仕事だと心を奮い立たせ、箸でミールワームを1匹つかみ、目を瞑ったまま口に放り込んだ。

次ページ 記者が感じた「罪悪感」