喧嘩の奥義4 出そうな杭は早めに摘み取れ
格闘技道場「士心館」の林館長によると、喧嘩で大切なことは敵を減らしてエネルギー効率を高めることだという。企業間にあてはめるとライバルをいかに減らすか、になる。
出そうな杭を早めに摘み取ることで成長しているのが、ファーストグループ(奈良県天理市、藤堂高明社長)だ。同業の自動車整備工場を9年間で約30カ所買収。社員数は200人を超え、売り上げも40億円に拡大してきた。藤堂社長は、10年先にライバルになりそうな有望企業をいち早く味方にする戦術をとってきた。
自動車整備工場といえば、市場規模が年々縮小傾向にある。車が壊れにくくなったほか、自動車販売店が修理事業を強化しているため、煽りを受けている。藤堂社長も10年前に父から自動車整備工場を引き継いだが、年間7000万円以上の赤字が出ている状況だった。
生き残り策を考えるうえで、藤堂社長はソフトバンクアカデミアの一期生となって孫正義社長から直接薫陶を受けた経験がある。プレゼン大会で何度も優勝した。「孫社長から『早めに成長しそうな芽は摘み取るべき』と教えてもらった。その教えをただ実践しているだけ」(藤堂社長)。勝ちパターンを愚直に実践している。
自動車を軸に商店街活性化も目指す
藤堂社長は自身の動きを戦国時代の武将に例える。自動車整備工場の業界で全国制覇するために、ひとりで取り組んでいたら時間がかかってしまう。そこで各地方で成長著しい同業他社を積極的に傘下に収めていく。
豊臣秀吉が天下統一したとき、毛利家や島津家といった有力大名を滅ぼすことはしなかった。同じように藤堂社長も、買収した企業の代表に本社の執行役員を兼ねてもらい、その地区の経営も任せてしまう。
藤堂社長は「10年先を考えたら、私と一緒にやった方が成長できる。幹部として支えてもらえないか」と口説く。
さらに、任せられる人材が見つかった地域で、集中して企業買収を進め、修理工場や自動車保険の代理店、レッカー業者などを傘下に収めていく。対象となる企業は後継者不足に悩んでいたり、営業力不足から顧客が少なくなってしまったりして経営に行き詰まっていることが多い。そこで救いの手を差し伸べるような形で陣営に取り込んでいく。
ただ複数の会社で重なっている事業もある。その場合は、各工場の得意分野だけに特化できるように整理する。「地域を面でとらえて戦えるように買収を仕掛けている」(藤堂社長)。
藤堂社長が次に目指すのは街づくりだ。自動車整備工場再生のノウハウを商店街の活性化に使う。「郊外は車移動がメーン。自動車工場が再生のキーになれる」(藤堂社長)。藤堂社長は不採算業界を立て直すことで、全国統一を図っていく。

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