日経ビジネス5月8日号では、競合他社と戦ってでも顧客を奪い取る術を紹介してきた。今回、経営者が多く通う格闘技道場「士心館」の林悦道館長の実践術と経営者たちの考えを基に企業が勝ち残るための6つの奥義としてまとめた。中巻では2つの奥義を紹介する。

喧嘩の奥義3 得意技を徹底的に磨け

 北海道一の繁華街「すすきの」。たったワンブロックしか営業地域を作らなかった企業が13年間で全国で1万店の飲食店を顧客に抱えるまでに成長した。それがいずみホールディングス(札幌市)だ。泉卓真社長は得意技を徹底的に磨くことで事業を拡大してきた。同社は札幌中央卸売市場近くに本社を置き、魚や野菜などを1万店の飲食店へ卸している。社員数は70人、売り上げも38億円に伸ばしてきた。

 泉社長は2004年に設立した当初、破天荒な水産卸として、すすきので有名だった。スーツ姿で飲食店に配送し、頼まれもしないのに共用スペースの床を磨くといったことをしていたからだ。しかも安かった。営業地区を台車で回れる範囲だけにするなどして固定費を下げたことで低価格を実現できた。こうして信頼を獲得し、事業を拡大してきた。

 泉社長は売り上げがゼロだった時から「日本一の卸を作る」と言い張っていた。日本一の卸とは、規模だけでなく、飲食店を活性化するためのパートナーとしてともに成長することを目指すものだった。実はスーツ姿で納品していたのも奇抜さを狙ったわけではない。「作業着で訪問するのは魚屋の勝手。サービス業としてスーツで訪問するのは当然だと考えていた」(泉社長)。

 泉社長は東京を中心に全国へ事業を拡大するにあたり、すすきの時代とは別の得意技を仕込み挑んでいる。

 例えば先日始めたのが「5時間配達サービス」だ。道内の漁港から札幌市内の顧客に水揚げ後、5時間以内に届ける。都内にも当日16時までに届くので、高い鮮度の魚が夜の営業に間に合う画期的なサービスだ。これまでの常識から考えると、ありえないスピードで運ぶ。同業他社から「本当に運んでいるのか」と揶揄された。そこで輸送を中継しyoutubeで公開することで黙らせた。「自分たちはやるべきことをやるだけ。自分たちが成長すればそのたびに敵も変わるので、技をしっかり磨けばどんな相手でも倒せる」(泉社長)。泉社長は得意技を磨き続けることで成長する青写真を描いている。

いずみホールディングスの泉卓真社長(写真撮影:吉田サトル)