喧嘩の奥義2 味方を最大限生かす

 次の奥義は「味方を最大限生かす」だ。「士心館」の林館長は「もし親分が『子分が使えない』なんてぼやいているなら、それは親分の能力不足。どんな人間でも才能を見出して戦力にすることが必要だ」という。

 北海道で訪日観光客を専門にした飲食店や衣料品店などを経営するグラフィックホールディングスの山本壮一社長はこの奥義を経営で使いこなしている。

 多くの外食産業が人手不足にあえでいるが、グラフィック社からはその悲鳴が聞こえない。障害者雇用に積極的に取り組んでいるからだ。すすきので500坪超の訪日観光客専門店を運営している。その厨房の2割を障害者が担う。「才能を見出して使いこなせていないのは経営者の責任。障害を持つ人にはルールと作業分担をしっかりすれば活躍してもらえる」(山本社長)。

 さらにアパレルや美容のほか、中古車事業や内装工事業など約10の事業を展開する。飲食で利用した訪日観光客にエステを紹介するなどしている。

 「多業種を展開することで、社員の離職率低下にもつながっている。多様な人材を活用できるようにまだまだ業種は拡大する」(山本社長)。

 山本社長は幼少期に海外で受けたもてなしに感銘を受け、10年前から訪日観光客に満足した旅を提供することに取り組んでいる。だが、それを阻むのが既存の観光業者だ。旅行業者の担当者を接待したり、観光客を土産物店に送り込んでもらったり、粗悪な食事を提供したりすることが、まかり通っていた。

 「業界全体の雰囲気として、どうせ1回しか来ない観光客だと思って対応していたように思う。それがどうしても許せなかった。だから自分でやると決めた」(山本社長)。

 山本社長が次に見据えるのは海外進出だ。様々な事業で育てた人材を核に事業を拡大する考えだ。

グラフィックホールディングスの山本壮一社長(写真撮影:吉田サトル)
グラフィックホールディングスの山本壮一社長(写真撮影:吉田サトル)
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