約4000の管理組合を受託するまでに成長してきたが、同業他社の妨害は日常茶飯事に行われているという。妨害のネタにされるのが過去の訴訟問題だ。

 10年ほど前に、受託していた管理組合の理事長から名誉毀損で提訴されたことがある。合人社もその理事長を相手取って訴えた。双方が訴えを起こしたものの、いずれも敗訴した。同業他社が「合人社は顧客から訴えられるような会社ですよ」と吹聴するようになった。

 そこで福井会長の戦い方を決めた。「競合他社は訴訟のことしか、うちの弱点を見つけられていない。それならこのことを積極的に話すことにした」(福井会長)。

 見込み客に対し、先に訴訟の経緯を説明することにした。さらに裁判で争った管理組合の新理事長に推薦状を書いてもらうことにした。その書面は「訴えは管理組合ではなく前理事長個人によるもの。伝聞に惑わされないで下さい。私達が推薦致します」とある。旧理事長とは争いになったものの、このマンションの管理業務は竣工以来担当しているため実現できた。

 見込み客に対してはこの書面を見せるとともに、近場の受託先のマンションへ案内する。一般的には見栄えの良い物件へ案内することが多い。だが福井会長は単に最も近い物件を案内している。「ときには粗(あら)も見えてしまうだろう。見込み客にありのままを見せて気に入らなければそれまで」(福井会長)。あえて弱点を見せることで敵を減らし受注につなげようとしている。

合人社グループの福井滋会長(写真撮影:菅野勝男)
合人社グループの福井滋会長(写真撮影:菅野勝男)

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