5月9日号の日経ビジネス特集「強い会社は会議がない」では、スピード経営を極めた先進企業の「即断即決術」を取材した。予測不能な事件が頻発する不確実な時代を生き残っていくには、従来とはまったく異なる意思決定の方法を追求する必要がある。その一つの解決策が「人工知能(AI)」の活用だ。

 例えば、日立製作所は企業の経営判断をサポートするAIを開発している。経営上のテーマを打ち込むと、そのテーマに関する1000万件もの情報をネットからかき集めて分析し、わずか80秒程度で回答を出してくれる。そのメカニズムの詳細や今後の課題を紹介する。

日立製作所が開発を進めている、経営者用の人工知能(AI)の画面イメージ。画像上部の枠内に「We should enter Southeast Asia market.」といった回答をAIが表示。経営判断のサポートに使える
日立製作所が開発を進めている、経営者用の人工知能(AI)の画面イメージ。画像上部の枠内に「We should enter Southeast Asia market.」といった回答をAIが表示。経営判断のサポートに使える

 「我が社は東南アジア市場に参入すべきか?」──。

 このような経営上のテーマをAIに打ち込むと瞬時に、ネット上で新聞記事や調査レポート、白書など1000万件程度の情報を収集開始する。約80秒後に結論が出た。

 「我々は東南アジア市場に参入すべきです。その理由は三つあります。一つは…」。

 画面からは、合成された女性の声で返事が述べられていく。これは日立が開発している経営判断用AIのデモの様子。賛成・否定だけでなく、収集した情報を元に「賛成」という結論を出した複数の理由も論理的に説明してくれる。

 現在は約25台のサーバーで構成される同AIシステムは、パソコン画面から経営上のテーマを文字入力して使う。このAIのポイントは、日立が独自開発した「価値体系辞書」、「相関関係データベース(DB)」という2つの機能だ。

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