シャープがハマったVUCAの罠

 2013年3月期に5453億円の連結最終赤字に落ち込んだシャープは、単独での経営再建を図るもうまくいかず、2015年3月期にも2223億円の最終赤字を計上。産業革新機構と台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業による買収合戦の結果、4月、最終的に鴻海による買収が決定した。日本の大手電機メーカーが外資企業の傘下に入る初めてのケースとなった。

 シャープが今日ここまで衰退したのは、VUCAのVでもある「変動」への対応力の弱さが最も大きい。社運を賭けた液晶パネルの異常な速度での単価下落、中韓パネルメーカーの尋常でない急成長、中国スマホメーカーの台頭……。目まぐるしく変わる経営環境の変化に対応できず、「事前に想定していた以上の出来事が次々と起こった」と髙橋興三社長は何度も公の場で繰り返した。

台湾の鴻海傘下に入ったシャープ。髙橋興三社長は何度も「想定外の動きに対応できなかった」と決算会見で述べた(写真:都築雅人)

 「変動」への対応の遅さを示すエピソードがある。2013年、液晶パネルの納入先を広げようと脱「米アップル」を図ったシャープは、中国スマホメーカーへ活路を求める。しかし、中国市場では現地のパネルメーカーが台頭、安価なパネルで販売攻勢をかけ次々と中国メーカーの受注を獲得していた。

 「シャープはとにかくスピードが遅い。パネル部品でちょっと設計の変更をお願いしたら、『日本に持って帰って検討する』『4カ月はかかる』と言われた。中国メーカーなら2週間でできる」。中国スマホメーカー関係者はこう明かす。その後、同メーカーはシャープとの取引をやめ、中国パネルメーカーへと切り替えたと言う。

 こうしたことの積み重ねにより、気が付くと、シャープは中国の膨大なスマホ開発経済圏から外されていた。これが液晶事業の膨大な赤字へとつながる。

VUCA時代の対策、「即断即決」「朝令暮改」

 VUCAの時代では、入念にシミュレーションしても想定を超える事態が次々と発生してしまう。ではどうすればいいのか。その最大の対応策が、「スピード経営」だ。めまぐるしく変わったり、予期せぬことが起きたりすれば、この変化の早さに合わせ経営判断をしていけばいい。

 シャープも、「今日受注をとっても、明日は失注する」といわれる巨大な中国スマホ経済圏の変化のスピードに合わせ、社内の営業や開発体制を変えていく必要があった。スピード経営ができていれば、もし即断即決で動いて失敗しても、「朝令暮改」ですぐに撤退すれば会社が負う傷はすくない。

 VUCA時代では検討に検討を重ねている時間はない。時代は刻々と変化し、また新たな不測の事態が起きているのだから。5月9日号の日経ビジネス特集「強い会社は会議がない」では、そんなVUCA時代に光る企業のあらゆる「即断即決の極意」を取材しまとめている。あなたの会社はVUCA時代に対応できているだろうか。