かつては一選手としての人生でしたが、クラブの代表・監督・選手を兼任する立場となった今は、これまで以上に様々なバックグラウンドの人たちと巡り合うようになりました。有り体な表現をすれば、驚くこと、新鮮なこと、分からないことがドッと押し寄せて来る日々です。

 組織のトップなので、未知なる世界に挑戦することは当然といえば当然ですが、そんな中でも「なるほど!そうなっていたのか」「こういうつながりもあるのか」と一人で感心することも少なくありません。ただし、十代のころから自分の中にある「何事もまずは挑戦」という基本線は不変です。所帯が大きくになるにつれて、むしろこの信念はますます強くなっています。

「社会への応用」を常に意識してきた

 海外にいたころも含めて自分が体得してきたサッカーとは、技術のことだけではないんです。クラブが地域の中にどう溶け込んでいくか、社会でどういうポジションに立つのか、何を社会に届けられるのか――。サッカーという組織プレーの社会への応用です。

地域に溶け込み、サッカーの裾野を広げるため、子供向けのサッカースクールも定期的に開催している

 沖縄SVが事務局となった「2018沖縄サッカーキャンプ」では、過去最多の24クラブを沖縄に誘致して、トレーニングマッチを50試合も組みました。狭い意味でのサッカー強化だけなら、そこまで頑張って誘致する必要はないかもしれません。でも、沖縄ではなかなか見ることができないJ1、J2の選手たちを間近に見られ、県外のサポーターも沖縄に来るきっかけになる。それが結果的に沖縄のサッカーレベルの向上にもなれば、観光地・沖縄のPRにもなる。

 自分のつながりを活かして、ポドルスキ(ヴィッセル神戸)、陽介(柏木陽介選手、浦和レッズ)、髙萩(洋次郎選手、FC東京)、林(彰洋選手、同)とキャンプ地で対談してネット配信したのも、サッカーを通して「何かが生まれ、盛り上がるんだ」という雰囲気を、目に見える形にしたかったからです。周りの方々の協力で一定の成果を出せたと思っていますし、この後もムーブメントにしていきたいと考えています。

 沖縄SVは今、ほぼ選手だけで始めた「チーム」から、いろんな人たちを巻き込みながら「クラブ」にしていく過程にあります。トップチームは九州リーグ昇格という結果を出したことで、全国から加入希望の問い合わせが来るようになりました。

 ではクラブとしてはどうか? 成功の方程式が準備されているわけではありません。まさに手探りです。

 ここでも基本は「まずは挑戦してみる」。伝統織物の首里織や紅型を生かしたポロシャツをつくったり、健康飲料のもろみ酢を発売するために自分たちが製品効果の実証をするエビデンス取りに協力したり。農業と福祉を掛け合わせた「農福連携」をサポートする活動も続けています。「なぜ、サッカークラブが?」と聞かれることを続けてきました。