11月後半に入ると、僕はサンフランシスコにあるヘッドハンターのオフィスをよく訪れるようになった。僕たちのソフトウェア製品の販売に関しては、販売パートナーに(間接的に)売ってもらうパターンもあるのだが、直販(営業マンによる直接販売)も行わなければならない。水道会社が全米に散らばっていることを考えると、ラースさん他、僕たちの営業リソースは東海岸(アメリカの東半分と言ったほうが正確かも知れない)をカバーすることはなかなかできないので(東海岸と言ったら、例えばサンフランシスコから飛行機で5時間くらいかかる。ある意味では全く別の国に行くくらい距離が離れているのだ)、東海岸担当の営業担当役員を雇わなければならないと思ったためだ。

求む!東海岸の熱き仲間
現在のレッドウッドシティ・オフィス、つまりアメリカの西海岸では、友人の友人、もしくは近くにある大学の掲示板などで人材を募集することができたが、東海岸では僕たちフラクタのメンバーにもあまり知り合いは多くなく、したがってヘッドハンターに頼るしかないのだ。アメリカでは、人材の流動性(あるビジネスマンが今の会社から次の会社に転職することの容易さ)が非常に高いので、ヘッドハンターがあらゆる手段を使って候補者を探し出し、声をかけ、諸々の条件に合意できれば、2週間後にはその人はフラクタで働いているという流れだ。
候補者に関しては、法人向けのソフトウェアを売ってきた経験があることもさることながら、何よりこの水道産業という非常に特殊な業界に精通していること、その仕組みを知っている人を僕たちは求めていた。ヘッドハンターと条件をすり合わせ、広く候補者になりそうな人をヘッドハンティング会社のオフィスにある大きなスクリーンに映しては、あーでもないこーでもないと議論して、少しずつ少しずつ候補者を絞っていく。
来年1月に複数名と最終面接をすることを目標に、12月中に多くの候補者の職務経歴書を見て、ビデオ電話などで1次面接を終わらせておきたかった。このポジションについては、フラクタの将来にとって非常に重要であることから、僕が直接、採用から管理までを行うことになっていた。12月のある日などは、午後いっぱいの予定を空けて、午後1時から5時まで、1時間ずつ、立て続けに4人の候補者とビデオ電話で話をしたりした。ただでさえ忙しい日々が、さらに忙しくなった。
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