トゥルルルル、トゥルルルルルルル、携帯電話の音が鳴ったかと思うと、これが止まらない。誰だ?誰だ?と会場の50人が周りを見渡す。そんな折、司会進行役の人があろうことか携帯電話ではなく、近くにあったプロジェクターのリモコンのボタンを間違って押してしまった。

 ウィーーン。

 すると、僕たちがプレゼンテーションに使っていた天井から出たり入ったりするプロジェクターのスクリーンが、どんどんと天井に向けて仕舞われていった。マティーはパワーポイントの資料が映し出されたスクリーンが消えていったことに呆然としつつも、プレゼンテーションを止めようとはせず、一生懸命話し続ける。

 ウィーーン。

 またもや同じ音が別の場所から聞こえてきた。混乱した司会進行役の人が、さらに間違ったボタンを押したらしく、今度は部屋の前方ではなく90度右側、部屋の横側にある巨大スクリーンが天井から出現した。

 ここでラースさんがマイクを持って、割って入った。

 「え~、みなさま~、それではこれより、90度お身体を回転していただき~、右側の景色をご覧ください~」

 旅行の添乗員さながらのマイク・パフォーマンスで、会場全員が大爆笑の渦に包まれた。さすがフラクタのCOO、天才的な機転の効かせ方だ。マティーはホッとしてプレゼンテーションを続ける。結果、プレゼンテーションは大成功だった。

 興奮した僕たちは会社の皆さんに別れを告げ、ビルを出ると記念撮影を行った。こうした一つひとつの思い出を、しっかりと胸に刻み込んで、いつか世界をアッと驚かせたい。皆そう思っていた。

加藤、ラース、マティー、プレゼンテーションを完遂致しました

僕たちは、救える

 最後に、今回のプレゼンテーションに盛り込んだ話題について。僕たちが水道配管の解析に使っている機械学習が、昨今どのように他の産業にも応用されているかというトピックに触れておきたい。

 IBMがスタンフォード大学と共同し、皮膚ガンの一種であるメラノーマ(悪性黒色腫)の発見に機械学習を使い始め、素晴らしい成果を挙げている。このアルゴリズムを使って人間の皮膚の写真を解析すれば、98%の確率でメラノーマを早期発見できるそうだ。

 残念ながら、僕の母は、このメラノーマで亡くなったのだ。この技術がもっと早く実用化されていれば、母は死ななくて済んだかも知れない。こうした事例を調べるにつけ、今自分たちがやっている機械学習を使った水道配管の交換箇所特定というものは、本当に実社会に大きなインパクトがあることに、ますます自信を深めている。僕たちの技術はアメリカの水道産業を救うことができるはずだ。手遅れになったら負けだ。急がなければならない。

これからも飛び回ります

 前回も、色々な読者の方から応援のメッセージをいただいた。本当に嬉しい限りだ。読者の方々からの応援メッセージには、全てに目を通すようにしている。応援メッセージなどは、この記事のコメント欄に送ってもらえれば、とても嬉しい。公開・非公開の指定にかかわらず、目を通します。