話の発端は、いつものようにランチを食べながら、「なぜカリフォルニア、とりわけこのシリコンバレーには、こんなにも情熱のある人たちが集まるのか?」ということをラースさんと話したことだった。

 この地には、「情熱ある人たちが一定数集まれば、きっと何か大きなこと、社会に有益なことが起こるだろう」といった、ある種強烈な「楽観性」が横たわっている。ここには、チャンスを求めて、世界中から人が集まってくる。ここでは、掃除婦のおばさんですら「私たちの目の前には、チャンスが溢れているのよ」と口にする。若者たちが目を輝かせて、自らの夢とビジョンを語り、ベンチャーを創造していく。そして、今日ボロを着ていた若者も、明日はポルシェで通勤だ。

日本のどこかに存在する、変わった人を探せ

 残念ながら、日本はシリコンバレーにはなれない。南はサンノゼから、北はサンフランシスコにかけて伸びるこの特殊な地域は、半導体産業、パーソナルコンピュータ産業、インターネット産業、クリーンエネルギー産業、ソーシャルネットワーク産業を次々と生み出し、今はこうして人工知能を飲み込みながらロボット産業を生み出そうとしている。シリコンバレーは、多くの偶然を追い風にしながら、長い年月をかけて、こうした生態系とも言える「場」を形成してきた歴史があるのだ。

 僕はいつも日本のことが気になっているので、ラースさんに聞いた。

 「ラースさん、シリコンバレーは本当にすごいところだ。毎日、それを肌で感じている。世界中の情熱の、いいとこ取りだ。でも、日本のビジネス環境は、こんなにダイナミックじゃないんだ。僕は逆に、なぜ日本がこうならないのかが、最近よく分からなくなってきたんだ。日本はどうやったら、こんなお化けみたいな国や地域と競争ができるっていうんだ?」

 ラースさんの答えは明快だった。

 「加藤さん、カリフォルニアは世界的に見ても特殊なエリアだ。古くはゴールドラッシュの時代から、多くの人が夢を求めてこの地にやってきた。そしてカリフォルニアは、移民を積極的に受け入れてきたんだ。残念だけど、東京を一夜にしてシリコンバレーに変えることはできないだろう」

 「もし目の前にいる人たちに情熱があると思えなかったとしても、加藤さんがガッカリする必要はないよ。情熱のない人たちを、情熱ある人たちに変えることは難しいんだ」

 「ただ、日本にも、加藤さんのように変わった人、情熱を持った人がきっといる。もともと情熱のない人たちに火を点けてまわってもダメだ。そうじゃなくて、既に日本のどこかに存在する、変わった人たち、情熱のある人たちを探すんだ」

 「加藤さんが情報を発信する、誰かと話をする。もし相手が変わった人であれば、その人に情熱があれば、きっと気づく。向こうから寄ってくるさ。そういう人を仲間にするんだ。そうすれば、それが日本発でも、きっとシリコンバレーで戦うことができるはずだ」

 このラースさんの言葉で、霧が晴れた。

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