アメリカのベンチャー企業、とりわけハイテク分野での競争が苛烈なシリコンバレーのベンチャー企業は、投資家から巨額の資金調達をして、どんどん、どんどんスピードを上げていく。通常の企業が10年かけてやることを、1年半くらいのスピードでやってのけるイメージだ。そのためには、自分で一から十まで作っていては、要は間に合わないのだ。

 「自分で作るか? それとも人が作ったものを買うか?」

 この問いに対する答えは、「良い」とか「悪い」、また「好き」とか「嫌い」とかの次元の話ではなく、ただただ競争に勝つために「間に合わないから」「仕方なく」外部からの調達を多くする傾向にあるということだ。

 古典的な競争戦略論なるものを持ち出せば、何でもかんでも自前で作るほうが「長期的に競争優位性を維持できる可能性が高い」とかいう議論になるのだろうが、正直そんなことを言っている間に、最初の競争に負けてしまうのだから、この議論自体にはあまり意味がない。

意見は聞きつつ、一人で決め、全力を結集

 ベンチャーの本当の競争優位性は、不確かな状況の中を突き進み、「価値」と「成長」を同時に実現できる事業を構築する「勇気」や「情熱」、またそれを実行する「スピード」にあるように思う。こちらに来てから、日本の人たちの議論がスローモーションに見えるようになったといったら言い過ぎかも知れないが、ほとんどそんな印象を受けている。

 シリコンバレーには、ものすごい熱気と段取り力、そして、意思決定のシンプルさがあり、それが極端に早いスピード経営を可能にしている。ここは重要なポイントだが、意思決定に関して、「皆の合意を取り付ける」、もしくは「多数決で決める」などという文化は、ここにはない。周りの様子をうかがいつつ、最大公約数という玉虫色の結論を導こうという文化そのものが、ここには存在しないのだ。

 そうではなくて、「皆の意見を聞きつつも、基本的にはCEOが一人で決める」というスタイルが、こちらの本流だ。その意味では、僕がかつて、このアメリカ法人CEOを引き受ける際に条件として挙げた「アメリカの市場開拓に関しては、加藤の独断と偏見に任せること。合議制など取らないこと。それが担保されなかったら、その日にこちらから辞任するということを了承すること」(第1回の記事参照)というのは、日本ではハチャメチャなことに見えるかも知れないが、こちらでは普通なのであり、違和感の無いことなのだ(いくつか会社を経営してきて、こうしないと結果として「良い会社」が出来上がらないことを感じていたから、もともと僕はこういう条件を提示したのだ)。

 面白いのは、議論を尽くしたチームのメンバーたちは、ひとたびCEOがそれを決定した後は、決定された事項を最速で実行に移すべく、全力で協力するという暗黙のルールがあることだ。何と分かりやすく、なんとスッキリした意思決定の仕組みだろう。僕とラースさんも、様々なテーマに関してお互い議論を尽くす。僕は、自分の意見を採用する場合もあれば、ラースさんや、他の従業員の意見を採用する場合もある。ただ、僕たちはひとたびある事項が意思決定されれば、それが最終的に誰から出された意見であっても、それを最善解と信じ、それを実現するべくチームのメンバー一人ひとりが最大限の協力をするのだ。

 もう一つ、今月印象に残っていることを話しておきたい。それは、「情熱ある人たちを、どのように集めるか?」ということについて、ラースさんと議論したことだ。