水道管に腕を突っ込んで確かめると、心配していたデコボコはない。これならロボットはしっかり走れそうだ

 さて、それでは今しがた切ったばかりの水道配管の中を確認してみようか。

 思ったよりもデコボコしていない。シャツの袖をめくり、思い切り二の腕までパイプの中に手を入れて、ペタペタとパイプの内面を触っていく。デコボコはない。いいぞ。そして、意外とパイプの内面はザラザラしている。水分こそ付着しているが、もっとも目の粗い、紙やすりのような感覚に近い内壁だ。いいぞ、いい調子だ。これならロボットが走れるのではないか。百聞は一見にしかず、案ずるより産むが易しとはこのことだった。

日本製か、アメリカ製か、カナダ製か

 こうして何度か現場の見学をすることで、ある程度将来に対する自信を持ちつつあった僕たちではあったが、ロボットの全体を構成する、ある重要な部品に関して、その開発の進捗が芳しくないことがずっと気にかかっていた。

 この部品が上手く動いてくれないと、それがガスであれ水道であれ、パイプの中にロボットが入っていっても、検査データを取って帰ってくることができないのだ。ラースさんとは半年以上もずっとこの件を議論してきて、僕たちもできるだけ日本サイドで自社開発した部品を使いたいと思っていたのだが、だんだんと時間軸が合わなくなってきた。現在、水道公社と話しているパイプ検査のビジネスが今にも動き出そうとする中、のんびりと構えていられる状態ではなくなってきたのだ。

 僕たちは既に、北米でこの部品を手に入れられる可能性がある候補企業をいくつか絞り込んでいた。日本サイドでの開発が上手くいかなかったときに備え、僕とラースさんは、アメリカ東海岸はペンシルバニア州に飛び、ある部品メーカーの経営陣と面会し、部品の供給が受けられる約束を取り付けていたのだ。

 この会社とは、その後何度も電話会議を持ち、そろそろこの部品の供給を受けようかと考えていたのだが、一方で、この選択肢を取ることで、時間軸という意味で、追加的な足踏みを余儀なくされるだろうことも分かっていた。

 もう一つの選択肢は、アメリカではなくカナダにあった。どうやらカナダの企業が開発している部品は、性能が良いらしいことは認識していたが、ロボットとのつなぎ込みに難がありそうだった。ただし、この評価に関しても情報が少なく、その真偽は定かではなかった。

 ある朝、僕とラースさんはこの重要部品の供給に関して、ペンシルバニア州にある会社から供給を受けるプランの詳細について議論していた。このアメリカ企業と提携することが現実的だが、これを進めるには如何せん時間がかかる。ロボットが確実に市場に投入できる代わりに、投入のタイミングが遅くなってしまう。僕たちは悩んでいた。

 そんな中、一度は上記のカナダ企業が開発している部品を検討してみたいという気持ちが、僕たちの中で徐々に高まっていた。その日の午後、ランチから帰ると、ラースさんが思い立ったように誰かに電話して、熱烈に議論をしている。どうやらこの部品のことを話しているようだ。