そんなこんなで、候補者のマットさんにSkypeで会ってみることにした。なんと、彼は過去にロボットのビジネスを自分でやっていて、奥様は日本人だから、ある程度、日本語も話せるというのだ。しかもアメリカ海軍出身で体育会系。ラースさんと一緒に色んな質問をしたが、Skypeで話を終えた僕たちの意見は一つだった。

「マット、最高だな」

 Skypeの面談が終わると、ラースさんは興奮した面持ちで、「加藤さん、俺たちはラッキーだ。彼以上の人材はいないよ」と大声で話している。あっという間に採用が決まった。

 7月18日、マットの入社日を迎えた。僕たちはサンノゼでマットのオリエンテーションを終えると、いつものスポーツバーで歓迎会を開いた。ラースさんと日本人エンジニアのヨネ、そこにマットが加わって、4人になったアメリカチームの決起集会は大いに盛り上がった。

新戦力のマット(右)が合流。ラース副社長に続き、いい出会いに恵まれた

ヒューストンの展示会でマット始動

 翌週の7月27日、テキサス州ヒューストンで行われる石油産業の小さな展示会に出展するため、サンフランシスコから直行便でヒューストンに向かった(本当はロスアンゼルス経由でヒューストンに入る予定だったのだが、この便が大幅に遅延したので、この直行便になった。大丈夫。サンフランシスコ空港で4時間も閉じ込められたなんて、僕は愚痴らない。ここはアメリカ。フライト遅延にはもう慣れっこだ)。

 マットは既に前週からヒューストンに入っており、またラースさんも数日前の日曜日からヒューストン入りして準備をしてくれていた。ヒューストンのウィリアム・ホビー空港に到着してゲートを出ると、まるでサウナのような蒸し暑さだ。

 同じアメリカでも場所が違えばこうも気候が違うということに、僕は毎回新鮮な驚きを感じてしまう。空港地下の薄暗い車寄せから、黒光りする坊主頭のタクシー運転手が運転するタクシーで安宿に到着したのが、夜23:30くらい。さすがにこの時間にラースさんやマットを呼び出して食事に連れ出すのも悪いので、その日の夜は近くのレストランで一人夕飯を食べることにした。

ウィリアム・ホビー空港の薄暗い地下の車寄せでタクシーに乗り、ひとまずホテルへ

 少し寝ると、またすぐ朝が来た。朝から元気なラースさんに「おはよう」を言うと、またコーヒーをガブ飲みし、僕たちが新しくオープンしたヒューストンのオフィスに向かった。ヒューストンで付き合いのある会社から、オフィススペースを間借りしたのだ。

ヒューストンの朝食。エネルギー充填完了
新たにオープンしたヒューストンオフィス
まだガランとしたオフィス。ここが新たな始点になる

 オフィスで身支度を整えると、僕たちは展示会の会場に向かった。配管点検用のロボットを展示すると、多くの人たちが足を止めて、色んな質問を矢継ぎ早に繰り出していく。1週間のトレーニング期間で覚えた知識をマットが披露する。なんとまあ感じの良い人だろう。「マットにヒューストンを任せればきっと安心だね」。僕とラースさんは、ほっと胸をなでおろした。