せっかちなジョエルがサポートすると…

 7月9日、製品と技術担当副社長のジョエルが入社してから、彼はしばらくフラクタの中で起こっていることをよく観察しているようだった。2週間くらい時間をかけてじっくりと観察を行い、その観察結果を自分の過去の経験と照らし合わせる。こうして次にやるべきことのリストを作り、それを淡々と実行していく。それがジョエルのやり方のようだった。そんな活動がちょうど2週間経ったあと、ちょうどフラクタ全米営業ミーティングが行われたのだ。

 「この営業ミーティングは、次の製品の方向性を全社に指し示す絶好の機会だ」とジョエルは言った。気が早いこと、この上ない。しかし、僕は自分自身が無類の「せっかち」であるということを自認しているので、このジョエルのせっかちさ加減がとても好きになった。

 ジョエルは営業ミーティングで「新製品ビジョン」を発表しようと思っているらしく、コーヒーを片手に、ジョエルと僕は何度もミーティングを持った。そうこうしているうちに、ジョエルがフラクタに参画してしばらく、7月の終わり、8月の始めを迎えるころになると、営業サイドで面白いことが起こるようになった。大手の水道会社が、立て続けに、フラクタの製品を買いたい、試してみたいと言うようになったのだ。

 あるカリフォルニア州の大きな水道会社は、ずっと営業活動を続けてきたものの、なかなかソフトウェア購入には「イエス」と言ってくれなかった歴史がある。長い長い営業サイクルに、僕もラースさんも辟易としてきた。一方で、あるアメリカ北東部の大きな水道会社も、昨年からコンタクトを続けているものの、話はいっこうに進まない。入口は良いものの、どうしても途中で話が止まってしまう。

 ところが、ここ最近、ジョエルが営業のサポートのために電話会議に出たり、実際の営業に同行するようになると、向こうのほうから「買いたい」と言ってくるのだ。「お金を払います」と。

 僕は最初、何が起こっているのか、この現象自体に気づかなかった。営業担当はダグのときもあれば、他の人のこともあったが、急に話が動いたとして、僕は「営業担当が頑張ってくれているんだろう。よしよし」くらいに思っていたのだ。おまけにジョエルとくれば、営業同行から帰ってくると必ず、「加藤さん、フラクタの営業マンは素晴らしい仕事をしているよ。今日一緒に同行して、色々とお客さん候補に質問なんかをさせてもらったんだけれど、反応は上々だ。本当に営業マンたちは良い仕事をしているよ」なんて言うのだから。