「ジョエル、君はその時、どうする?」

 僕は悩んだ。そんなある日、営業に向かうサンノゼ空港の構内で、ある一人の最終候補者に電話をかけた。電話口に出たのは、その前の週、1時間と決められたインタビュー(面接)の中、何だか話に夢中になってしまい、結局2時間以上話し込んでしまった候補者、ジョエルだった。

 「ジョエル、やあ、元気かい? 製品・エンジニアリング担当副社長の採用については、今週中に目処をつけようと思っている。そこで、最後に一つだけ質問をさせてくれないか。ジョエルのバックグラウンドからは、製品をきちんと定義できること、それをきちんとエンジニアリング・チームに作らせることができるのが分かるよ。それは良く分かった。あとは組織だ。これから人が増える。製品・エンジニアリングの部署で、半年で2倍、3倍くらいに人が増えていく。

 その時に、本当に、身内に厳しくできるかい? 多くの組織の問題は、リーダーの覚悟の問題だ。組織がやりたいこと個人がやりたいことが衝突するとき、自分の部署と隣の部署がやりたいことが衝突するとき、リーダーは部下や隣の部署ときちんと正面から向き合い、良い意味で強く対立できなければならない。言うことを聞かない部下がいたら、きちんとクビにする。納得がいかない要求が来たら、体を張って押し返す。これができるかってことだ。ジョエルは良い人そうだ。顔を見ればわかるよ。ただし、戦場では良い人でいられないときがある。良い人でいてはいけないときがある。その時、あなたはどうしますか?」

 ジョエルはすぐにこう答えた。

 「加藤さん、たぶん加藤さんは僕と面接で話をして、僕の一面、それは優しい一面というのかな、を見たのだと思う。ただし、僕にはもう一つの側面がある。それは厳しいビジネスマンとしての一面だ。でもそれはね、毎日厳しいとか、単に厳しいのが好きだとか、そういうことじゃない。

 あらゆるものは、フェアかどうかで判断されるべきものだと思ってるんだ。

 僕はね、フェアじゃないものを憎む性質を内側に持っている。働かないのに、貢献しないのに、給料ばかりもらおうとする人、発言の内容を通そうと、声ばかり大きい人、皆フェアじゃないと思う。そして僕は、それがフェアじゃないと思ったとき、自分の内側である爆発が起こって、ものすごく厳しい側面を出すようになる。人との対立を恐れるという感じは、僕にはないね」

 なるほど、判断基準は「それがフェアかどうか?」か……。僕は妙に納得した。なぜなら、僕が自分の人生で何よりも大切にしてきたことが、それは本当にフェアなのか?という自分に対する問いだったからだ。自分と同じようなことを言う人が、ここにもいたか。履歴書に書いていないことが、ここにあった。

 「分かった。採用はこれで決まりだ。細かいことは人事担当のジョンと話をしてくれ。すぐにオファーレターにサインするよ」

 僕はこのMIT(マサチューセッツ工科大学)を出て、GEのビッグデータ部門含め、多くのソフトウェア企業、とりわけスタートアップ企業で製品・エンジニアリングの要職を渡り歩いてきたジョエルという人間に賭けてみようと思った。

 6月中旬から7月中旬にかけて、ダグの営業・マーケティングチームで、さらに6人の営業マン(電話営業も含む)がフラクタの仲間に加わった。1カ月でチームの人数が2倍になり、良いスピードだ。車の運転もそうだが、スピードが上がれば上がるほど、僕の集中力は増していく。こういう営業のパターンが正解だ、と納得できるまで、いったん走り抜けたいと思った。

右手真ん中(吉川君とアイリーンの間)がジョエルです。インド料理を食べに行きました


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仕事で寄ったPalo Altoの街並みです。こうした景色に癒されながら、英気を養っています