6月11日、日曜日だが、昼前には自宅を出て、サンフランシスコ国際空港に向かった。待ちに待った全米水道カンファレンスを翌日に控え、アメリカは東海岸、ペンシルバニア州フィラデルフィアに乗り込むためだ。サンフランシスコは目が覚めるような青空が広がり、過ごしやすい気温に包まれていた。お昼にサンフランシスコ国際空港に到着すると、搭乗ゲートに既に集まっていた吉川君やフーリオ、本多君と合流した。
ユナイテッド航空の、すし詰めのエコノミークラスに5時間近く揺られ、時差+3時間のフィラデルフィアに到着すると、時間は既に夜の10時半を回っている。サンフランシスコとは打って変わって、高い気温と蒸し蒸しとした湿度の高さに、急に東京の夏を思い出した。そういえば、しばらく日本に帰っていない。空港前の車寄せから、タクシー配車アプリのUber(ウーバー)で車を呼ぶと、しばらくしてボロボロのスバル・アウトバック(日本名はスバル・レガシー)が僕たちの前に滑り込んだ。
フラクタ・ハウスへようこそ!
宿に到着するまで、30分近くタクシーに揺られていたのだが、どうもこの車、車体のどこかが壊れているらしく、そもそもスピードが出ないどころか、高速道路でカーブを曲がっていく際、車体のシャーシ部分(下半分)がズルっとワンテンポ遅れて付いてくる感じがする。チーム皆で、「おい、なんかこの車おかしいぞ」「おお、またズルっと車体が滑った感じがした」などと不安な声をあげる中、運転手はそんなことどこ吹く風、窓を全開にして蒸し暑い空気を大量に取り込みながら、どんどん進んでいく。
高速を下りると、街の中に入った。明らかにホームレスの数が増え、どうにも治安が悪そうなエリアを抜け、ダウンタウンのはずれまで来ると、通り沿いにたたずむ古いレンガ造りの一軒家の前にタクシーが止まった。出張の際、いつもはホテルに泊まるのだが、今回はチームのメンバーが多いこともあり、また大きな展示会がいくつか同時に開催されていた影響もあってか、ホテルが取れずに、Airbnb(エアービーアンドビー)という民泊サービスを使って、4日間だけ、ボロい一軒家を借りたのだ。
少ない灯りを頼りに、入口ドアのロックを外そうと悪戦苦闘していると、中から、ガチャっと勢い良く扉を開けて、満面の笑みでマティー(Matti)が出迎えてくれた(コンサルタントとしてフラクタに参画してくれていたマティーも、この6月1日から製品担当の部長として正式に入社してくれたのだ。ところでラースさんはCOOに昇格した)。中に入ると、いつもと変わらぬ満面の笑みで、ラースさんが座っている。
「やあ加藤さん、フラクタ・ハウスへようこそ!」。相変わらずどこまでも明るい男だ。この2人、僕たちよりも1日早くフィラデルフィアに入って、展示会に向けた準備をしてくれていたのだ。僕たちは、マティーが作ってくれたスモークサーモンとクリームチーズを乗せた即席ベーグルサンドを頬張りながら、翌日に向けた打ち合わせをすると、明日も朝は早いからと、それぞれの部屋に入ってすぐ眠った。

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