メキシコ料理 with ドン

 レンタカーで高速道路を長い間走り、やがて僕たちは深夜になって現地のホテルに到着した。荷物を部屋に置き、ホテルのフロントで夜中でも空いているというメキシコ料理のレストランを案内されると、僕たちはタクシーで5分ほどの場所にあるレストランに向かった。テキサス州は少し南に下るだけで、メキシコに入るという、アメリカとメキシコの国境にある州だ。自ずからメキシコの文化とアメリカの文化が混ざりあったようなところがあり、美味しいメキシコ料理店がたくさんあるのだそうだ。

 これまでどんな国でも見たことのないような、きらびやかな(イメージとしては「ギンギンギラギラ」といった感じだろうか)装飾に彩られた店内に入り、僕たちがテーブルにつくと、早速マリアッチ(メキシコ特有のギターの弾き語り演奏)のバンドマンたちが僕たちのテーブルを取り囲んだ。心ばかりのチップを払い、景気づけに歌を歌ってもらうと、最後には「ようこそテキサスへ」と喜ばしい歓迎を受けた。

深夜のメキシコ料理店、ギラギラです
深夜のメキシコ料理店、ギラギラです
陽気な歌が店に響きます
陽気な歌が店に響きます
そして両脇から響く「ようこそテキサスへ!」の歌声
そして両脇から響く「ようこそテキサスへ!」の歌声

 ドンがメキシコ料理のメニューを手にとって、お薦めの料理を僕に紹介してくれる。

 「加藤さん、これはこういう料理で、本当に美味しいんだ。是非食べてもらいたいね」「いや、ちょっと待てよ、こっちも良いんだよ。これは最高だね。これを頼むと良いよ」「それとね、このデザートが、甘くてとってもお薦めなんだよ。ショートケーキみたいなもんでさ、イチゴが乗っかっていて、生クリームがたくさんで、食べるとこ~んな風に、幸せな気持ちになるんだ」……

 身体は大きいものの、無邪気な少年のように笑うドンを見て、僕は何だかしんみりと嬉しくなった。こういう一人ひとりが、フラクタという会社を信じて、僕を信じて、こうして冒険に参加してくれているのだ。

 彼はスタンフォード大学の卒業生ではないかも知れない。ハーバード大学の卒業生ではないかも知れない。ただし、そんなことはどうでも良いのだ。フラクタに入社するとき、「加藤さん、フラクタの製品はすごいよ。ずっと、こんな面白い製品を待ってたんだ。こういうものを思いっきり売ってみたいと思っていたんだ」と、電話で無邪気に話したドンのことを、僕は思い出していた。

 こういう人が幸せにならなければいけない。こういう人が豊かにならなければいけない。僕はもう、ものすごくやる気になっていた。よし、もっともっと良い製品を作って、アメリカ中で売りまくってやろう。歩合制の営業マンであるドンを、きっと大金持ちにするんだ。僕はそう心に誓った。

次ページ トップ営業 with ダグ