自己紹介があまり長くなるといけない。SCHAFTの創業から売却を行う以前は、僕はずっと企業の立て直し、いわゆる企業再生ばかりやっていた。早稲田大学理工学部の応用物理学科を卒業したものの、大学院に行く金も余裕もなかったから、東京三菱銀行(今の三菱東京UFJ銀行)に就職し、そこで不良債権処理という業務に出会ったのが運の尽き、そこからのめり込んで倒産目前の企業を助ける仕事に没頭するようになり、プロの経営者になって、いくつかの会社の企業再生をInterim CEO(暫定社長)や再生担当執行役員といったポジションで引き受けてきた。

 まるで道場破りだ。このあたりも『無敵の仕事術』に細かく書いたので、興味があれば読んで欲しい。当時の僕が、どれだけ大変な思いをして、いわゆるマネジメント(経営)を学び、その中で、マネジメントではカバーできない領域であるリーダーシップを学んできたのかということを、隠すことなく開陳している。

アメリカに日本の旗を立て、もう一度驚かす

 さて、話を現在に戻そう。僕はまた凝りもせず、日本のロボット技術をアメリカの市場に導入しようと奮闘している。「まず日本の市場で試しましょう、それが上手くいったらアメリカに進出しましょう」という、ものすごく正当な方法を完全に無視して、勝手に「日本ではなく、先にアメリカで売ります」と宣言するやいなや、アメリカ法人を立ち上げて、そのCEOに就任し、どんどん自分が思ったように進めていく。

 日本のロボットベンチャーにおける、僕のアメリカ法人に対する協力、すなわち僕のアメリカ法人CEO就任の条件はこうだ。

 「アメリカの市場開拓に関しては、加藤の独断と偏見に任せること。合議制など取らないこと。それが担保されなかったら、その日にこちらから辞任するということを了承すること」

 何という傲慢、何というハチャメチャな話だろうか。しかし、ものには必ず理由があるのだ。なぜそんなことを僕が言うのかというと、それは僕が自分の中に明確なビジョンを持っているからだ。

 "Make Japan Visible in the US"

 すなわち、アメリカに日本の旗を立てること。

 日本の製品やサービスを、世界に売ってみよう。いまや世界の中心、ビジネスの中心はアメリカだ。とりわけハイテク製品を売って成功するためには、アメリカで売れなければ話にならない。世界を日本の製品・サービスで、もう一度驚かしてやろう。そのためには、まずアメリカ人を驚かす必要があるという話だ。

 大した話ではないかも知れないが、一方で、それを実現している日本企業は少数だ。

アメリカに日本の旗を立てる
アメリカに日本の旗を立てる

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