「第4次産業革命」という言葉が世間を賑わして久しい。「AI(人工知能)」なる不可思議なものが、生活や産業のあらゆる局面に入り込んでくるというのだが、一方で「AI・IoTに積極果敢に取り組む」と中期経営計画の発表会で宣言した大企業からは、なかなか具体的なアプリケーションが出てきていないのが現状だ。

 どの会社も口を揃えて「汎用的なAIプラットフォームを・・・」などと言うのだが、これはかつてExcelなどの表計算ソフトウェアが無かった頃のデスクトップコンピューターのようなもので、一見なんでもできそうな構えを持ってはいるものの、コンピューターに触るのはゲームをやるときくらいで、なんのかんの実際上は仕事の役には立たない「箱(はこ)」として、家庭に塩漬けになるリスクを抱えている。また他方では、機械学習を使ってやみくもに画像認識を繰り返し、「こんなん出ましたけど」とばかり、占い師的な解析結果を押し売りしようとする、経済的な価値が見えにくい軽めのベンチャー企業が世に溢れている。

 つまり、これらを見つめていても、何が第4次産業革命なのか、果たしてそんなことが本当に起こるのか、全く見えてこないのだ。すなわち、それを作っている本人も、とりあえずプレスリリースを打ってはみるものの、それが第4次産業革命につながっていくという確かな実感を得られていない可能性があるということだ。

「とんでもないもの」を手に

 そんな中、吉川君が、何度も何度も眠れぬ夜を過ごしながら書いてきたフラクタのソフトウェアには、こうした曖昧性を吹き飛ばす明確な技術的、経済的価値を見つけることができた。水道産業という設備集約型産業において、水道配管は最も大きな設備投資項目であり、この更新投資を40%も削減することができれば、水道産業のあり方そのもの、世界中の水道ビジネスのあり方そのものが変わってしまうだろう。

 これまで水道事業でノウハウを溜め込んできたプレイヤーたちの顔ぶれすら、やがては変わってしまう。これまでこの産業で儲け(利潤)を取ってきた会社が、ある日とたんに儲からなくなってしまう。一方で、たとえそれが新参者であっても、この技術をいち早く手に入れた会社たちは、この産業で儲けを取ることができるようになってしまう。水道産業を含めたインフラ産業における競争優位性の源泉が、機械学習(人工知能)というテクノロジーの出現によって大きく変わってしまうのだ。

 つまり、多くの人たちはまだこれに気づくことができていないが、これが第4次産業「革命」というものがもたらす本当の現実なのだと僕は思っている。僕やラースさん、吉川君やフラクタのメンバーたちは、ここシリコンバレーで、それをソフトウェアという形にし、社会への実装を始めてしまった。事業が進めば進むほど、自分たちは何か「とんでもないもの」を作ってしまったのではないかという感覚を持つようになった。