やがて、ファイナンスのトピックに移ると、また僕が議論をリードした。僕からは、フラクタの成長をさらに加速するために、今年の夏を目処として、大型の資金調達を行いたいことを発表した。

 「このように、フラクタの成長を考えると、今年中にもう1回、しかも大型の資金調達をする必要があります」

 「アメリカのベンチャーキャピタルを回っていきたいと思いますが、一方で、日本の事業会社にも声を掛けたいと思っています」

 この取締役会の中で、アメリカに本社を置く企業として、ただ一つだけ合理性が無かったことがあるとすれば、この部分だろう。

 なぜ日本の事業会社から資金を調達しなければいけないのか? 本場アメリカのベンチャーキャピタルを回るだけで良いじゃないか?と。

 しかし、デーブは僕の目をじっと見つめて、こう言った。

 「加藤さん、分かった。日本の企業も興味を持ってくれるかも知れないよ。是非当たってみるのが良い」

 僕はこの時、デーブの男気のようなものを、しみじみと感じた。

取締役会を終えて。左から社外取締役のデーブ、法務部門責任者のジョーダン、ラースさん、投資家と僕の更なる気合が写っておりますでしょうか

3日間だけ、日本へ

 3月7日、8日、9日と、僕は3日間だけ日本に帰国した。いくつかの日本の大企業に対して、フラクタとの資本ならびに業務提携を直接呼びかけることが出張の目的だった。

 フラクタの持つ(機械学習を使った)予測アルゴリズムは、やがて上水道配管のみならず、地中に埋まるガス配管や光ファイバーケーブル、さらには地表と接点がある鉄道の線路などの経年劣化を上手く分析できるようになるだろう。また、こうしたインフラ資産を保有する民間企業や地方自治体、さらには地方自治体から委託を受けてこれを管理しようとする民間企業などにとって、こうしたインフラ資産を機械学習(コンピューターによるパターン認識)によって極めて効率的に管理しつつ、同時に管理コスト(更新投資ならびにメンテナンスコスト)を劇的に削減できることは、今後インフラ領域で持続可能な競争優位を構築するために不可欠になるはずなのだ。

 またこうしたインフラの予兆保全技術に国境はなく、日本の会社がこうした技術を手に入れれば、やがて日本はインフラ技術輸出国としての地位を確かなものにできるかも知れない。