立ってくれ、日本の企業たち
2月に入ると、僕たちはアメリカでの水道事業進出を目論む何社かの日本企業に対して、意識的に声掛けを行っていった。
ドナルド・トランプ政権はアメリカのインフラを再整備するプランを固めつつある。道路、空港などがターゲットかと思われていたが、ニュースなどでも、トランプ政権が水道インフラの再整備について言及する姿勢が見えるたび、いよいよこの分野がホットになってくる実感があった。
一方で、僕たちは今後事業をさらに前に進めるために、どこかのタイミングで、大きな資本を持った企業と提携関係を構築して一気に事業を進めるのが良いと判断することになるのは間違いないと思っていた。日本という国を愛する僕からしても、どこかで日本企業と一緒に何かできれば良いなと思ってはみるものの、果たして日本企業はこうした事業機会に対して、適切に(あるいは即座に)反応することができるだろうかと考えれば、やはり心許ない気がしてしまう。
「キャッシュフローは?」「従業員の人数は?」
シリコンバレーではあまり重きが置かれない項目に目が取られれば、日本企業はこの事業機会を逸してしまうだろう。フラクタという会社が将来的に大きくなって、それを日本企業が買収しようと試みても、正直上手くいかないのだ。出来上がった会社を、資本の力で上から抑え込もうとしても、残念ながらそっぽを向かれるのがオチだ。日本という国が、日本の企業が強くなるためには、フラクタのような小さな会社と積極的に提携する、もしくはフラクタを丸ごと吸収するという選択肢を考えるべきだと思うが、それは、フラクタが在アメリカの企業として巨大になってからでは遅いと思うのだ。
そうではなくて、このタイミング、すなわち企業としてのサイズは小さいが、一方で大きな市場に対して非常に優れた(技術的に差別化された)製品を作りあげた段階でフラクタのノウハウを吸収し、むしろ一緒になって事業を開発していくという姿勢が日本の企業にあれば、もしかしたら名ばかりのオープン・イノベーションの議論を超えて、日本企業も本当にイノベーションというものが何であるのか、それをどのように作っていけば良いのかを学ぶことができるかも知れない。
正直日本の会社にはお金はあっても、アメリカでの事業ノウハウは無く、僕たちが本来提携すべきは、自分たちが活動するアメリカや、水関連の事業でノウハウを蓄積してきたイギリス、フランスなどのインフラ関連大企業だと思うのだが、ただ、これが企業の成長フェーズという観点から見つめた際、事実上最後のチャンスになるかも知れないと思えば思うほど、日本企業にも声を掛けておきたいという、ややセンチメンタルな感情が頭をよぎる。
立ってくれ、日本の企業たち。つまらないプライドを鼻の下にぶら下げている場合じゃない。今やらなければ、他の国にこの技術もビジネスも持って行かれてしまうのだから。そんなことを考えながら、僕は日々どんどん進んでいくフラクタという船を必死で漕いでいた。

前回も、色々な読者の方から応援のメッセージをいただいた。本当に嬉しい限りだ。読者の方々からの応援メッセージには、全てに目を通すようにしている。応援メッセージなどは、この記事のコメント欄に送ってもらえれば、とても嬉しい。公開・非公開の指定にかかわらず、目を通します。
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