12月中旬も、僕は東海岸の営業担当役員の候補者とひたすら面接を続け、忙しい日々が続いていた。クリスマスホリデー周辺は、アメリカ全体のビジネスが止まってしまうため(アメリカでは、12月25日の周辺は、みな休暇をとって、家族と過ごしたり、旅行に出かけたりするのだ)、12月22日の金曜日までにできることを全部やっておこうと、フラクタのチームメンバーは各々がやるべき仕事に精を出していた。
12月14日の夜にシアトルへの出張から戻り、15日の朝に会社に出社してその日の予定を確認すると、僕はあることに気づいた。そうか、今日は「あの日」だ。
アイコさん、皆と一緒に戦おう
その日は、チームメンバー全員の14時から17時の予定が(Googleカレンダーで)ブロックされていた。前週の全社会議で、COOのラースさんが営業全般の報告を終えると、「事務関連トピック」として話を始めた。「えー、社員の皆さんは、来週の金曜日の予定を空けておいてください。来週金曜日はスター・ウォーズの新作を全員で見に行きます。もう一度言いますが、予定を空けておいてください。全員で行きます」。ラースさんのスター・ウォーズ好きは社内ではもう有名だが、15日は、『スターウォーズ・最後のジェダイ』という作品を、フラクタのオフィス(レッドウッドシティにある)からほど近い映画館にメンバー全員で見に行くことになっていたのだ。
またこの日、僕たちフラクタは素晴らしい新メンバーをオフィスに迎えていた。アイコさんだ。
早稲田大学の理工学部で応用物理学(読者の皆さんの中には、お気づきの方もいるかもしれない。僕はアイコさんと全く同じ大学、学部、学科を卒業しているのだ。まさかシリコンバレーで同じ大学で青春を過ごした仲間と一緒に仕事をするとは思わなかった。よく考えれば、すごい確率なのだから)を専攻した後、MIT(マサチューセッツ工科大学)の原子力工学分野で修士号を取った秀才で、10年以上前に、家族でアメリカに渡ってきた。吉川君やフーリオ、アイリーンと一緒に、次に来る主要な製品機能のソフトウェア開発を行ってもらおうと、僕たちはアイコさんに仲間に加わってもらったのだ。
面接を重ねるたび、僕たちは、アイコさんが内に秘める情熱、知性、誠実さに、強い共感を覚えていった。この人ならば、長くフラクタと一緒にやってくれる。この人と一緒ならば、フラクタはもっと前に進むことができる。入社してしばらく経つが、アイコさんは、このたった一ヶ月の間にも、ずいぶんと多くのことをこなしてくれている。CTOの吉川君が喜んでいることは、言うまでもない。

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