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何物にも縛られるな、自ら変化を起こそう

 そんな中、少しずつ少しずつ、僕が自分で認識するようになったことがある。それがフラクタだろうが、他の場所だろうが、僕が小手先のビジネス・スキルなんかよりも、もっとずっと大切にしたいと思っていることは、たとえば次のようなことだ。

1.カウンター・カルチャー

 カウンター・カルチャーとは、主流の体制に迎合しない文化、主流の文化的慣習に対抗する文化のことを言う。僕は、大(だい)なるものが嫌いだ。権威主義が大嫌いだ。間違っていること、どこにも愛や正義の無いことを、力で押し付けたり、権威なるもので押し込んできたりする人たちが、本質的に嫌いなのだ(私は多数決で選ばれた国の代表です。今から戦争を始めましょうと言われて、「それは仕方無いですね。それが社会のルールですから」と答えるだろうか? バカバカしい話だが、世の中こんな話に溢れている)。

 大企業や、時の政府。弱きを助け、社会をより良くすることよりも、自分たちが負けないゲームを展開しようとする人たち。自分の食い扶持(ぶち)を守るために、後進を牽制(けんせい)し、社会全体の前進を止めようとする人たちが嫌いなのだ。必ずしも十分な機会均等が達成されていない状況下、学歴や職歴といったことを声高に主張すること自体が無意味だと思っている。自分の名前を名乗る前に、自分の会社の名前を名乗るような大人になってはいけない、僕はそう思って生きてきた。そういう大なるもの、中身の無い権威に対して、僕は、知性とスピードを持ってして挑戦したいのだ(残念だが、知性と学歴は、往々にして一致しない)。フラクタの皆にも、そうあって欲しいと願っている。

2.フリー・スピリット

 心はいつも自由でなければならない。僕たちは、誰からも、抑圧されることがあってはならない。以前も書いたが、フラクタでは、ある時間帯にオフィスに出社するのは、他のスタッフがいて意見交換がしやすかったり、誰かの隣りで作業したりすることが便利だからだ。何も会社が強制したからそうするのでは無い。上司が明らかに間違ったことを言った。それに対して、その部下が、会社から給料をもらっている、その給料が無ければ家族を養うことができないからといって、「私もそう思います(=上司が正しいです)」と答えるようなことがあってはならない。

 会社というのは、こうした抑圧(と不正義)に対して、ものすごく目を光らせていなければならないと、僕は思っている。そんな間違いを押し付ける上司がいたならば、僕はCEOとして、その人間を責任を持ってクビにしなければならないのだ。趣味やスタイル、生き様、あらゆるものが個人個人で異なっていて良い。同質化の圧力なんて懲(こ)り懲(ご)りだ。自分は皆と違うことを考えているのに、みんなと同じじゃなきゃいけないという暗黙のルールのために、自分を愛して、自分らしく生きていくことができないなんて、そんなバカな話、あってはならないのだ。女性、男性、関係無い。労働者階級出身で何が悪い。フラクタのスタッフは、仕事で成果をあげるべきだ。しかし、その過程で、心は自由でなければならないのだ。

3.テクノロジーに対する、尊敬と愛情

 僕はテクノロジーが好きだ。テクノロジーが、社会で果たす「変革者としての役割」に興味があるのだと思う。テクノロジーには、社会をひっくり返す力がある。ひっくり返すというと言葉が悪いが、要はテクノロジーというものは、古い体制が、新しい体制になるきっかけ、隙間とチャンスを与えてくれるのだ。自動車が開発されたことで、人間が1時間で移動することができる距離が劇的に変わった。そして、それは周辺の不動産価格すらも変えてしまった(自動運転が普及すると、極端に渋滞が緩和する [信号が青になったら、赤信号で連続して停車していた10台の車が一気に動き出す。1台1台、前の車が発進するのを見てから動くのでは無い]。この技術の経済的な意味は、1時間で車が移動できる距離が2倍、3倍と広がることによって、不動産価格の変化という形で訪れる。要は、都心は便利だから不動産価格が高い、という方程式が成り立たなくなるのだ)。

 インターネット技術の出現は、旧来型メディアの権力と偏在性を、根本から覆(くつがえ)してしまった。また、人工知能アルゴリズムは、株式や為替を売った買っただのと言って大儲けしていた(つまり本質的には、人の物を右から左に流すことで浮利を得ていた)金融機関の担当者の職を奪ってしまった。テクノロジーは、ものすごく大きな括(くく)りで見ると、社会を良い形でリセットする機会を提供するとも言える。旧態然としたやり方が固着して、その道のエキスパートなる人たちが現れる。そして、努力もしないでお金が入ってくるポジションを形成する。やがて、やれ業界団体だ、資格制度だとこねくり回して、既得権益を守ろうとする。そこにテクノロジーがやってくる。あっという間に、これまで思っても見なかった角度から、既得権益を吹き飛ばしてしまう。そして、多くの資源が、民主化され、再分配されるようになる。僕はそういうテクノロジーの本質的役割を信じているのだ。