日本の反原発勢力には対案がない

東京電力には残す事業は何ですか。

橘川:東京電力パワーグリッド(PG)とエナジーパートナー(EP)です。この会社はやっていけると思います。資産は大きく、分社化の際にはここに人材が殺到しました。

 東電委員会ではPGまで再編しようという議論がありましたが、安定収入の素がなくなってしまいます。

 EPが基盤とする東京はすごくいい市場です。住宅が途切れない都市圏という定義だと世界一の広がり、という見方があります。

 自由化後の離脱率は10%に満たず、EPがその顧客を取り返せる可能性もあります。

 大手電力系の小売りの中で、東電の小早川社長が一番まともだと思います。関西電力などは、原発が再稼働すれば安い電力を手に入れられるのでそれから値下げできるという姿勢で、まじめに小売りをやっているように見受けられません。

 今後、関電と九州電力、四国電力の原発は再稼働の可能性があるので、電力小売りに熱を入れているように見えません。

 小早川社長は原発なしを覚悟しているのではないでしょうか。そうでなければ、ソフトバンクやニチガスと組みません。ブランドが傷つくかもしれないですから、小早川社長の本気を感じます。

 東電のPGとEPから継続的に賠償の負担をできるのではないでしょうか。そうすると東電問題は解決に向かっていくように思います。

 水俣病におけるチッソと同じです。同社は液晶部材で稼ぎ、水俣病の補償を長くやってきました。

 世界の経営史でこんな会社はありません。みんな逃げるか、潰れてしまうのです。儲かる仕組みがあり、新しい技術者が入って、賠償を続けています。50年経ったら東電は立派な会社だったね。と言われるように今、頑張らないといけません。

 水俣の町は環境問題のために世界で有名になりました。賛成か反対かではなく、こうした前向きな話をしていくべきです。

 少し話が逸れますが、日本の反原発勢力が説得力のある反原発政党を育てられなかったのは、対案を示さないからです。

 ドイツの緑の党は、一言で言うと石炭をうまく使いながら原発を減らしていく政策です。石炭ももちろん反対ですが、本当のところで反対しません。

 日本のように原発も火力もダメだと、選択肢は省エネと再エネしかなく、対案が作れません。時間の稼ぎ方の対案がないのです。

東電に批判的な人の間でも、具体的な対案について議論は活発になされていません。そうした状況の中で議論が深まらず、先送りの案が採用されているように映ります。

橘川:これまでの東電改革は、ごまかしが続いてきました。官邸は原発の建て替えを言いません。政治は次の選挙までの短期的な視野で考えています。資源エネルギー庁は様々な問題を分かっていますが、官邸と次のポストを気にして、結局は3年先しか考えていません。

 東電問題がすっきりするのは、政治家と官僚にとってリスクなのです。東電という悪者がいるために、自分たちに批判の矛先が向かないからです。

 最初は東電を悪者にして、その悪者の範囲を電力会社からガス会社に広げて、自由化のみに力を入れ、電力会社やガス会社を叩く構図が必要なのです。その一方で原発や東電については、できるところまで問題を先送りしたいのです。私には、政治家や官僚は東電が改革にもたもたしていることを望んでいるとしか思えません。

■変更履歴
記事掲載当初、本文中で「問題時沸騰水オペレーション会社」としていましたが、「問題児沸騰水オペレーション会社」に修正します。本文は修正済みです [2017/05/12 10:55]