日本のむちゃくちゃな時代が終わっただけ

ただ、中国の名経営者たちの破天荒なエピソードを読んでいると、「やはり中国という国はむちゃくちゃだ」と誤解されてしまう可能性もあるように感じます。日本のビジネスパーソンにはどのように読んでもらいたいですか。

高口:一見ばかばかしく見える事柄も、よく考えてみると実は深い問題や文化や社会制度の違いが隠されていることがよくあります。

 この手のお話をする時によく引き合いに出すのが「中国爆発ネタ」です。一時期、日本のウェブで中国B級ニュースが流行りました。中でも「中国爆発ネタ」は定番です。曰く、中国ではなにからなにまで爆発する。マンホールも爆発、スイカも爆発する。とんでもない国だというネタです。ちゃんと調べるとまったく別の姿が見えてきます。

 まずマンホールですが、下水道にメタンガスなどがたまり引火するのは中国のみならずよくある話。数は少ないですが日本でもありますし、米国でもあります。よく考えてみれば、構造上、下水道にガスがたまるなどよくある話です。むしろそうした想像力が働かなくなるほどに整備されている日本の下水道設備こそが驚きの対象なのかもしれません。

 スイカの爆発と報じられていたのも、実はスイカが成長しすぎて破裂しただけでした。天候が良くてスイカが予想以上に成長した。日本でも使われている、成長を促す農薬の量を間違えたというたわいのない話だったのです。

 『現代中国経営者列伝』で取り上げた破天荒なエピソードの数々も「笑い飛ばして終わり」ではありません。まず時代性です。今、日本人の目から見れば中国はむちゃくちゃな時代に見えるかもしれませんが、それは裏を返せば日本のむちゃくちゃな時代が終わっただけ。我々日本人がそうした時代を忘れてしまっただけなのです。

 第2次世界大戦の敗戦ですべてを失った日本人は、猛烈なチャレンジ精神で高成長を実現しました。その混乱期には破天荒な物語がいくらでも転がっています。高成長と破天荒さは表裏一体の関係にあるわけです。先進国になり経済成長が停滞してしまった日本では忘れられてしまったこの事実を、中国を通じて思い出すことはきわめて重要です。

 そしてもう一つ強調したいことがあります。中国の経営者たちのエピソードを破天荒に感じるのは、中国人がむちゃくちゃなのか、それとも日本人がずれているのか、どちらなのかを改めて考える必要があるのではないでしょうか。我々の目から見れば破天荒に見えるエピソードは、中国人にとっては当たり前なのかもしれません。そして、どちらがグローバルな基準に近いかは定かではありません。「中国はむちゃくちゃだ」とバカにしていると、気づけば日本人だけがガラパゴスに取り残されている可能性もあるのです。