現代中国経営者列伝に登場する8人の経営者のエピソードを通して読むと、中国の高度成長期とは何だったのかが浮かび上がってくるように感じます。このあたりも意識して書かれた部分ですか。

高口:「改革開放以来の中国経済の成長」はよく使われるフレーズです。ですが、1978年以来の改革開放はなにも一直線に進んできたわけではありません。中国共産党自身が暗中模索を重ねながら漸進的に改革を進めてきましたし、天安門事件後の経済制裁といった大きな挫折もありました。それぞれの企業家の生き様を通して、中国の高度成長期とはなんだったのかを描き出すこと、改革開放以来の中国経済史を俯瞰することが、『現代中国経営者列伝』のテーマです。

娃哈哈の宗慶後氏は印象的

8人と、エピローグに登場する数人を加えた全員が破天荒なエピソードを持っています。高口さんが一番好きなエピソードはどれですか。

高口:日本であまり知名度は高くないのですが、中国飲料業界のドン、かつては中国一の大富豪の座についたこともある娃哈哈の宗慶後氏は印象的な人物です。

 文化大革命により、15年間にわたって田舎で一労働者として働いた苦難の青年時代。リスクをいとわずに新規事業に挑み買収をしかける姿勢。「小皇帝」(一人っ子政策世代の甘やかされて育った子どもたち)向けの栄養飲料市場に目を付けた先見の明。外資が優位を築いた都市小売市場を避け、農村部に強力な販売網を整備したこと。そしてダーティーと言われても仕方がないような契約の魔術を駆使し外資を手玉に取った手腕。中国で勝ち抜く経営者に必要な要素をすべて兼ね備えた人物ではないでしょうか。

4月25日発売の『現代中国経営者列伝』(星海社)

 もう一人、書いていて楽しかった人物はアリババグループの馬雲氏です。アリババグループはフィンテック、ビッグデータ、AI(人工知能)とさまざまな分野で世界のトップランナーです。今や中国でもっともスマートなIT企業を率い、賢者然としている馬氏ですが、その人生を紐解くと、勉強では落第生。しかし胆力と弁舌の才能は超一級品というまったく異なる人物像が浮かび上がります。