田堂:中国は、これまで経済成長の中で、皆さんが考えるよりずっと多様な産業が育っています。そのおかげで、塗料原料の相当部分は中国国内で調達できるようになっており、あまり問題はありませんね。そこはやはり市場規模の大きさですね。

 資本規制についてもよく聞かれます。配当の送金は事前に認可を取れば問題はありません。それに、我が社は基本的に、現地で稼いだ利益は現地に投資しているので、大きな障害にはなっていません。

中国政府は、環境保護に力を入れ始めています。その対応はブランド価値に影響しますか。

田堂:実は我々は、環境に優しい水性型塗料を早い時期から売り出しています。この姿勢もブランド価値の向上に貢献したと思います。

 こうした着実な販売戦略が効果を上げるのに伴って工場も増やしてきました。全国に5カ所のマザー工場を配置し、その下に地域中核工場を7カ所、さらにその下に小型工場などを17カ所、計29カ所の生産拠点を張り巡らしています。これは、顧客の需要に素早く応えられるようにすることで、さらに浸透しようと考えた結果です。

施工業者のための学校まで作った

顧客のニーズにきめ細かく、素早く応える仕組みを作った。

田堂:施工まで手がけているとお話ししました。これを実現すべく、地場の施工業者に技術を習得してもらうため、5年前に学校まで作りました。中国全土に16校を設け、塗料の知識や施工技術を業者の方々に教え、卒業証書まで出しています。

 それまで技能を認定する機関は中国になかったから、当社の学校を出たことは彼らにとって技能の証明になり、顧客にも業者にも価値のあるものとなりました。当初は無償だったものを昨年から有償にしましたが、それでも学びたい人が来るまでになっています。

 東南アジア諸国でも同様の戦略で、個人と企業市場を攻めています。タイ、ベトナムでは、自動車や二輪車市場で大きなシェアを獲得。シンガポールやマレーシアでは住宅用で非常に強くなりました。

 アジア市場では、シンガポールの投資会社、ウットラムにTOB(株式公開買い付け)をかけられたことがありました。2013年のことです。当社とウットラムは50年来の付き合いで、合弁会社を設立する仲でした。この件は、話し合いで決着させました。合意内容は、ウットラムが当社に39%出資する、アジアに展開していた合弁会社は当社の子会社にするというものでした。

 これにより、当社の売上高は2015年度、一気に世界4位に浮上。ウットラムとも協議し、今後の成長に伴って、ウットラム側は出資比率を下げていくことになりました。中国市場は大きく変わりつつあります。内需を捉える戦略をしっかり立てていけば、まだ可能性はあると思います。