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 日本のモータースポーツの全盛期をご自身で経験しているから、増してそう思われるのでしょうね。

 「自分の商売抜きにしても、僕はとても悲しいし、心配しているんです。もしかしたらこの国は“競争”ということに対して、とてもネガティブな気持ちを持つようになったんじゃないか、とも思ってしまいますよ」

 クルマに戻ってからもケン・マツウラ氏のモータースポーツへの思いを語る言葉は止まらず。やがて、バイパスから折れて工業団地らしき一角へ乗り入れて…

 「はい、着きました」

 ええっ、これ、工場なんですか?!

 「お客さんを連れてくるとね、『いや、松浦さん、まだ食事は結構ですから先に仕事を』と言われたりします。レストランに見えちゃうんだね(笑)」

ヘリポート、強者どもが夢の跡…

 確かに、これで緑・白・赤の旗でも出ていたら完全にイタメシのお店です。外の囲いもなんともいえない珍しい色の岩を組み上げて作ってありますね。

イラスト:モリナガ・ヨウ(以下同)

 「石材店をやっている友達が、組む手間賃さえくれたら岩はタダでやると言ってくれたので、面白いかな、ってね。周りの工場は普通のフェンスだから、これ、ちょっと目立ってるかな」

 ちょっと?…と思っていると、同行絵師のモリナガ・ヨウさんが「うわ! ここ、ヘリポートですよ!」と足下を指さす。なるほど、駐車場の真ん中に円と「H」の文字が。

 「この工場を作ったのは日本がバブルでレースに参戦する企業家の人も多かったころでね。『松浦さん、ヘリくらい使えないと、なかなか松山まで行けないよ』とあちこちで言われるから、じゃあ、って用意したんだけど、完成したときには景気が悪くなって、ほとんど誰も来なかったんです(笑)」

 フットワークとか、レイトンハウスとか、GEOとか、当時は日本企業がメインスポンサーやオーナーだったF1チームが、たくさんありました…。