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(前回→「富士の麓の「体育館」に工作機械がずらり」)

「トヨタ・ガズーレーシング(TGR)」が世界耐久選手権に送り込むレーシングカー、TS050ハイブリッドのコクピットに座ってご機嫌の米内淨タマチ工業社長。3月の一般向けイベントで、行列に並んで乗り込んだ。

 西富士の小山の上に広大な立地と、体育館のごとき大型社屋。その中に居並ぶどでかい工作機械。タマチ工業の西富士工場にびっくり仰天していた取材班(私、編集Yとイラストレーターのモリナガ・ヨウさん)は、だが、まだこの会社の真の恐ろしさを知らなかった。それは、偏執狂なまでのチェック体制だ。

 歩き回るうちに、どの工場にも、完成したカムシャフトやシリンダーヘッドを検査する空間があることに気づいた。工作機械のすぐそばにもマイクロメーターなどの計測器が置かれ、その場でも精度をチェックする。聞いてみると、年間数千点の出荷製品は全数、三次元計測器などを使って綿密にチェックするのだという。

 「加工50:検査50、がタマチのポリシーですから」

 と、タマチ工業の米内淨(よない・きよし)社長は強調する。

 今回はシリンダーヘッドの検査室を見せてもらった(シリンダーヘッド、カムシャフトについてはこちら)。

内視鏡で検査、バリやゴミは鉗子で取り除く

 「シリンダーヘッドの内部には、冷却、潤滑のための水路、油路がたくさん通っています。50個くらいあるすべての孔を、ぜんぶ内視鏡でチェックして、中に残った異物やバリを鉗子で除去するんです」と、担当の方が説明してくれた。量産車ならば見逃しても問題のないレベルでも、ここではいちいち人が内視鏡で見て、しっかり排除する。

モザイクがかかっているのがシリンダーヘッド。手に持つ細い管が内視鏡で、奥のディスプレイに空洞の様子が映し出される

 大変な手間に思えるのですが、かかる時間は? 

 「製品にもよりますが、一面(ひとつのシリンダーヘッド)に18時間かかったこともありますね」

 さらに、E棟でバスタブを発見。これまたチェック用の設備だった。「80℃の湯に水没させ、熱膨張した状態で水泡がないかを確認をします。エア圧で、鋳巣(鋳造品の欠陥)がないかを調べるのです」(松井工場長)。

 製造時に十二分に気を配られているように思えますが、ここまでやらないとダメですか、と、工場長に聞いてみると「いや、いくら注意して作っても、やっぱり、こういう検査で(欠陥が)見つかりますよ」とのこと。

 米内社長は厳しいチェックの理由をこう説明する。

 「素材を我々が仕入れたものならば、失敗しても買い直せば、という考え方もできます。でも、レーシングマシンの場合は部品もお客様から預かった、世界一レベルの素材なんですよね。それをムダにすることはできない。自分たちではリカバリーできないものですから」

 「支給品不良率」という言葉があり、これが「預かった素材に対してどれくらいの不良品を作ってしまったか」を示す。目標は0.7%で、現状は0.4%だそうだ。もう事実上、完璧ってことではないのだろうか。

 「ですが、まだ満足はしていません。そもそも数字を目標にすること自体が危険を孕むんですよね。不良品を出さないんじゃなくて、数字さえ良ければいいだろう、という意識になってしまうから」