さらに、現場に立つ西富士工場の工場長、松井義則さんも言う。

 「実は、工作機械には機械ごとにけっこうクセがあって、扱いに長けた人間でないと望む精度は出せないんですよ。オペレーターの誰かが『えっ、インフルエンザ?』という事態もあるので、みんなで多能工化するよう努めているんですけどね」

ダウンサイジングでますます難易度が上がる

 ちなみに工場長から見て、この現場で働いてほしい人はどんな人ですか?

 「まず真面目な人、でも、一を聞いて十、とまではいかなくても、自分で仕事の先を読んで、どう動くといいかを考えようとする人が向いている、と思います」

 量産品ならば数が多くなるに従って効率も上がるが、モータースポーツは毎回特注品のようなもので、その都度段取りから考えることになり、学習効果が出にくい。しかも、市販車で顕著なダウンサイジング(エンジンの排気量=サイズが小さくなること)の波はレースにも訪れていて、エンジンは小型・軽量化している。ということは、加工がさらに難しくなる。米内社長は言う。

 「小さいものを作るためには、工具も小さく細くなるわけです。たとえば今まではφ20(直径20mm)が使えたのがφ10になって、でも長さは変わらない。そうなると、工具の剛性が下がって、振動が起きやすくなり、品物にびびりが生じたりする。細い工具を使う仕事が増えて、しかも納期を短く、となれば、『主軸高回転の工作機を導入せねば』と、決断を迫られるわけです」

大きさといい、見た目といい、たしかに電車っぽい。真ん中の“電車のドア”のようなところを開けて、加工する材料を出し入れする。どんな加工を施すのかを、液晶パネルで設定する
大きさといい、見た目といい、たしかに電車っぽい。真ん中の“電車のドア”のようなところを開けて、加工する材料を出し入れする。どんな加工を施すのかを、液晶パネルで設定する

 ここまでは、ぞろぞろ並ぶ巨大な工作機械に圧倒されていた。しかし、実はタマチ工業の真の恐ろしさはその先にあるのだった。

(後編はこちら

 この週末、4月16日、2017年のWEC開幕戦が英国・シルバーストーンで開催されます。トヨタと「タマチ工業の戦い」が、いよいよ始まるわけです。→トヨタは8号車が優勝、7号車はクラッシュから復帰して23位となりました(4月17日 2:30追記)

(※レース情報はトヨタ・ガズーレーシングのWECページが便利です→こちら