数値制御=数字を入れればOK、ではない
「いえ、よく誤解されますが、マシニングセンターやNC旋盤など、数値制御ができる機械だからといって、設計図の数字を入力すればできあがり、ということではありません。機械の精度以上の精密さを要求されることもありますし、何より、図面をいただいたら『これをどう作るか』を考えねばならない」
えっ、それこそ、図面通りに数値をぽんぽんっと入れればいいのでは…。
「レーシングカーの部品は、重量を0.1gでも削りたいわけです。できる限り軽く作れる設計がなされています。ということは素材が薄くなる。薄くすると、今度は剛性がなくなり、加工によって発生する熱で歪みやすくなります。歪むと、設計図通りの精度にならなかったり、性能が出なかったりする」
加工することで、部品の性能が劣化しちゃいかねないってことですか…。
「例えば加工のために材料をクランピング(固定)します。削ることで応力が生じ、アンクランプ(解放)すると、歪みが一気に表面に出て台無し、なんてことは普通に起こります。そうならないように考えて、試して、うまくいったら、そこでようやく工作機による数値制御で加工、ということです」
加工の手順まで配慮した図面が注文主から出てくる、わけではないんですね。
「お客様にも試作部はありますから、整備された工作図をいただくこともあります。でも基本的には『できる?』『やりましょう』ですね」
「言われたとおりにやりました。できませんでした」ではお仕事にならない。工作機械を動かす前に、タマチの社員は「どこから加工を始めて、どういう順番でやれば、歪みが最小限に抑えられるのか、剛性も保たれるのか」と頭を捻るのだという。
「そしてご想像の通り、同じ部品でも加工のやり方は、どの機械で、どんな加工を、どんな順番で、と、何百通りも考えられるわけです。正解があるわけじゃない。設計図通りに出来ないのは論外としても、品質が過剰に高くても、時間がかかりすぎてもムダです。納期に間に合う最善の回答を出さねばなりません。我々は、機械を積極的に導入して幅広い注文に応えようとしていますが、機械さえあればできるものではない、というわけです」
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