数値制御=数字を入れればOK、ではない

 「いえ、よく誤解されますが、マシニングセンターやNC旋盤など、数値制御ができる機械だからといって、設計図の数字を入力すればできあがり、ということではありません。機械の精度以上の精密さを要求されることもありますし、何より、図面をいただいたら『これをどう作るか』を考えねばならない」

 えっ、それこそ、図面通りに数値をぽんぽんっと入れればいいのでは…。

 「レーシングカーの部品は、重量を0.1gでも削りたいわけです。できる限り軽く作れる設計がなされています。ということは素材が薄くなる。薄くすると、今度は剛性がなくなり、加工によって発生する熱で歪みやすくなります。歪むと、設計図通りの精度にならなかったり、性能が出なかったりする」

 加工することで、部品の性能が劣化しちゃいかねないってことですか…。

【参考】カムシャフト、シリンダーヘッドとは【飛ばして読んでOK!】
画像左が「カムシャフト」。エンジンは空気と燃料を混ぜて点火し、その爆発力を回転力に変えて車輪を動かす。爆発に必要な空気を吸いこんだり、燃やした後のガスを吐き出したりするためにいくつものバルブがあり、そのバルブが動くタイミングをカムシャフトが決める。カムシャフトの楕円形の「カム」の部分が、バルブと繋がっているロッカーアームと触れることでバルブが開閉する。カムシャフトはアクセルを踏んでいない状態でも1秒間に10回転(4サイクルエンジン、アイドリングが1200回転/分として)していて、アクセルを踏み込めば猛烈な勢いでロッカーアームと擦れ合う。スムーズに動作するようにカムの表面はぴかぴかに磨き込まれている。画像右はエンジンで、点線で囲んだ部分が「シリンダーヘッド」。矢印の箇所にカムシャフトが2本組み付けられている。カムシャフトなどの高速で動く部品を支えるための精度、高熱に耐えるための冷却水の通り道などの加工が必要だ。ちなみに燃料と空気の爆発は、シリンダーヘッドの下の、「シリンダーブロック」の開口部に見える、ピストンの上部で行われる。これは解説用のサンプルで、実際には開いていない。(画像:Oleksandr Grechin(左)・yuyangc(右)/Shutterstock.com この画像はタマチ工業、トヨタ自動車のものではありません)
画像左が「カムシャフト」。エンジンは空気と燃料を混ぜて点火し、その爆発力を回転力に変えて車輪を動かす。爆発に必要な空気を吸いこんだり、燃やした後のガスを吐き出したりするためにいくつものバルブがあり、そのバルブが動くタイミングをカムシャフトが決める。カムシャフトの楕円形の「カム」の部分が、バルブと繋がっているロッカーアームと触れることでバルブが開閉する。カムシャフトはアクセルを踏んでいない状態でも1秒間に10回転(4サイクルエンジン、アイドリングが1200回転/分として)していて、アクセルを踏み込めば猛烈な勢いでロッカーアームと擦れ合う。スムーズに動作するようにカムの表面はぴかぴかに磨き込まれている。画像右はエンジンで、点線で囲んだ部分が「シリンダーヘッド」。矢印の箇所にカムシャフトが2本組み付けられている。カムシャフトなどの高速で動く部品を支えるための精度、高熱に耐えるための冷却水の通り道などの加工が必要だ。ちなみに燃料と空気の爆発は、シリンダーヘッドの下の、「シリンダーブロック」の開口部に見える、ピストンの上部で行われる。これは解説用のサンプルで、実際には開いていない。(画像:Oleksandr Grechin(左)・yuyangc(右)/Shutterstock.com この画像はタマチ工業、トヨタ自動車のものではありません)
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 「例えば加工のために材料をクランピング(固定)します。削ることで応力が生じ、アンクランプ(解放)すると、歪みが一気に表面に出て台無し、なんてことは普通に起こります。そうならないように考えて、試して、うまくいったら、そこでようやく工作機による数値制御で加工、ということです」

 加工の手順まで配慮した図面が注文主から出てくる、わけではないんですね。

「お客様にも試作部はありますから、整備された工作図をいただくこともあります。でも基本的には『できる?』『やりましょう』ですね」

 「言われたとおりにやりました。できませんでした」ではお仕事にならない。工作機械を動かす前に、タマチの社員は「どこから加工を始めて、どういう順番でやれば、歪みが最小限に抑えられるのか、剛性も保たれるのか」と頭を捻るのだという。

 「そしてご想像の通り、同じ部品でも加工のやり方は、どの機械で、どんな加工を、どんな順番で、と、何百通りも考えられるわけです。正解があるわけじゃない。設計図通りに出来ないのは論外としても、品質が過剰に高くても、時間がかかりすぎてもムダです。納期に間に合う最善の回答を出さねばなりません。我々は、機械を積極的に導入して幅広い注文に応えようとしていますが、機械さえあればできるものではない、というわけです」

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