円需要が増大(金利上昇で、有利な運用が出来る円を欲しがる人が増えるため)すると、そのまま円高になります。しかし円高は、輸出の減少や海外からの収益の円換算額を減少させることになり、景気を冷やします。

 財政出動により金利が上昇し、それによって自国通貨が高くなる(日本ならば円高)ことが、財政政策の効果を相殺してしまう。これをマンデル=フレミング効果と呼びます。

 変動相場制になることで、金融政策の効果も大きく変化します。

 そもそも固定相場制は、様々な需要を反映して変動しようとする為替レートを、一定に保つためにマネーの需給を調整するシステムですから、自主的な金融政策は理屈として不可能です。これに対して、変動相場制では金融緩和により金利が下がると、金利低下によってその国(例えば日本)での資金運用が不利になることで円安をもたらす。この円安が輸出等を通じて、さらに景気を拡大させる効果をも持つわけです。

 このように、70年代の国際金融制度の変化により、財政政策と金融政策の影響力は180度入れ替わってしまったのです。

日本への影響が相対的に小さい理由

 この逆転は、経済規模が比較的小さい国、貿易依存度が高い国、金融の国際化が進んでいる国で顕著になります。そのため、ヨーロッパ各国や新興国では財政から金融へという政策トレンドの変化が素早く生じました。その一方で、経済規模がそれなりに大きく、貿易依存度が低く、金融市場の国際化の度合いが低い日本では(政治的事情と相まって)「景気対策と言えば財政政策」という状況が継続します。

 にもかかわらず、リーマンショック以降、財政政策が再び注目を集める理由は何でしょう。現在も多くの主要国が変動相場制であることには変わりないのに。

 第一の理由は、ユーロの存在です。

 ユーロ圏は共通通貨を使っています。そのため、ユーロを用いる国では各国独自の金融政策を行うことが出来ません。そして第二の、より日本経済に関係する理由は、金利の低位安定化です。

 財政政策の効果を減殺する金利上昇はそうそう起きない、と予想されること、変動相場制下で金融政策の効果を高める金利の低下の余地がない(これ以上金利は下がりようがない)こと――両者が相まって、金融政策の効果が薄れてしまい、相対的に財政政策の有効性が見直され始めている、ということなのです。

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