そして、比較優位説の主張するところによれば
全ての国に(少なくとも1つは)比較優位な財がある
のですから、すべての製品の機会費用で他国に劣る(勝る)ことはできません(その理由は前編をお読みください)。絶対的には不利でも、機会費用で「比較」すれば「優位」な財が最低ひとつはあるのです。
前回のモデルで言えば、
【綿織物1反の機会費用】
E国:ワイン0.5本
P国:ワイン1本
ワイン1本の機会費用】
E国:綿織物2反
P国:綿織物1反
ですので、E国はワインに、P国は綿織物の機会費用が相手国に対して低い。すなわち「比較優位」があることがわかります。
はじめに、仮に国際間では綿織物とワインが1:1で交換されているケースから考えましょう。E国は「ワインを生産している労働者2人が綿織物生産に転職する」ことで、綿織物が2反増産されます。この綿織物をP国に輸出すると、交換比率が1:1なわけですから2本のワインが得られることになるでしょう。この取引をまとめると、
(機会)費用: | ワインの生産量が1個減る |
便益: | ワインを2個輸入できる |
ということになります。
どちらの国にもメリットが生まれる価格に収斂
いままでと同じ労働力(コスト)で、ワインが1本余計に手に入りました。こんないい取引はないでしょう。比較優位財の輸出によって、E国は大きく得をすることになります。その結果、E国内の労働者はワイン産業から綿織物産業へと移動し、E国の産業構造は綿織物中心になっていくことになります。その裏側で、P国では輸出需要の多いワイン産業への特化が進んでいくことになるでしょう。
もっとも上の例では、E国だけが得をすることになります。P国は損こそしていませんが、何の得もありません。ここで国際間の財の交換比率がもう少しワインが髙いケース、すなわち、ワイン1本=綿織物2本で取引されている状況を考えてみましょう。
このときP国では、「綿織物を生産している労働者3人をワイン生産に配置転換」して、それによって増産されたワイン1本を輸出すると綿織物2反が得られます。この取引をまとめると、
(機会)費用: | 綿織物の生産量が1個減る |
便益: | 綿織物を2個輸入できる |
となり、P国は比較優位財(ワイン)への特化によって大きな利益を得ることができるのです。
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