消費税は景気が良くても悪くても、買い物などの経済活動の大きさに応じて徴収されるので比較的安定しています。つまり、消費税は税収を安定させるメリットがあります。

 消費税のもう一つのメリットは、人々の働く意欲を阻害しないことです。所得税を個人の立場で考えると、所得を増やすために頑張るほど、それに比例して税額が増えるのは、少し残念な気がしますね。まして累進課税では、頑張って働くほど税率まで上がるのですから、働く意欲が減退しかねません。それに比べると消費税は、働く意欲には影響を与えない、という特徴があります。

 また「今の所得は少ないものの、貯金を持っている高齢者」に課税できることもメリットです。少子高齢化により現役で働く世代が少なくなりつつあることを考えると、この世代に負担が集中する所得税よりも広く浅く課税できる点はメリットだと言えるでしょう。

 もう一つのメリットは、脱税が難しいことです。所得税は、収入や経費などでごまかす余地が大きく、本来よりも少ない金額しか税金を支払わない人が出てきます。その点、消費税は支払う代金に対する低率の税金なので、不正を働く余地を小さくできるのです。

 また、自営業者の所得税は経費の算入などでサラリーマンよりも優遇されている面があるので、以前からサラリーマンの不満がたまっていました。消費税は誰もが同じ条件で支払うので、不公平感が小さい点もメリットと言えるでしょう。

 最後に、良し悪しの問題ではありませんが、1989年に消費税が導入された当時の経緯としては、「他の先進国と比べて日本は直接税が多く、間接税が少ないので、その比率を是正する必要がある」という点から消費税の方が好ましい、という面もあったようです。

●所得税と消費税のメリット比較
所得税のメリット 消費税のメリット
・貧富の差が是正できる
(貧しい人は無税にできる)
・不況の深刻化を防ぐ機能がある
・税収が安定する
・人々の働く意欲を阻害しない
・広く浅く課税できる
・脱税が難しい
・自営業者優遇ではない

高所得者と低所得者の不満を抑える組み合わせ

 所得税は累進課税であるため、貧富の格差は縮小しますが、高所得者に不満がたまりやすい税金と言えます。消費税は、稼ぎに関係なく、できるだけ広く浅く税金を負担してもらう仕組みです。こちらは、低所得者が不満を持ちやすい税金です。

 どちらが優れているということではなく、税金や社会保障や生活保護などを全体として眺めたときに、「望ましい程度に格差が是正されている」組み合わせにしておくことが大切です。所得税の累進度合いを調節したり、所得税と消費税の比率を調節したりすることが、その時々で徴税を実施する政府の重要な役割となるわけです。

 財務省のホームページを見ると、税金で大切なのは「公平の原則」「中立の原則(個人や企業の選択を歪めない)」「簡素の原則」であると書いてあります。この観点からも、消費税と所得税の組み合わせは、比較的よくできた税体系だと言えるでしょう。