この記事は、「日経ビジネス」Digital版で4月19日からスタートする新コンテンツ「日経ビジネスベーシック」からの転載です。詳しくは こちら
・金融業が利用する新技術の総称
・新しいサービスや効率化が実現
・新興勢力で業界地図が塗り変わる

 フィンテック(FinTech)とは、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた米国発の造語です。大量の電子データの集まりである「ビッグデータ」や、世界中で広く普及しているスマートフォン、技術革新が進む人工知能(AI)などを組み合わせた金融向け最新技術の総称として使われています。

決済、送金、不正監視まで

 フィンテックは、商売に関わるお金のやりとりである「決済」や、個人の間での「送金」、銀行預金などの「口座管理」、「不正監視」などで、これまでにはない新しいサービスや、効率化の方法を生み出しています。私たちの日々の生活はお金のやりとりなしには成立しません。ここに新しいサービスが入ってくることで、個人の生活や金融業の事業の中身、会社間の取引の方法などが大きく変わる可能性があります。

 例えば、何か事業を始めようとして、資金を借りたいとしましょう。これまでなら、近くにある銀行などに足を運んで、融資を受けるのが一般的でした。事業内容を説明したり、土地などの担保を差し出したりして、納得してもらえれば、晴れて融資の実行となります。

 それが、フィンテックを活用すると、このように変わります。

 ネット上で事業の構想などを説明して、広く小口の資金提供を募るのです。大勢の人に短時間でアクセスできますし、資金を提供する側もお小遣い程度の金額から気軽に投資ができます。こうした仕組みのことを「インターネット上の」という意味のIT用語「クラウド」と、資金集めという意味の「ファンディング」を合わせて、「クラウドファンディング」と言います。

取引履歴から優良企業を判断

 米国で決済サービスを展開している「ペイパル」もフィンテックの先駆けとして知られています。ペイパルの本業は、ネット通販などの際に販売店と利用者の間に入って、代金の振り込みや商品の発送などを管理して、安全に商取引を成立させることです。

 この会社がユニークなのは、この決済サービスを利用する中小企業6万社の取引情報を活用しているところです。

 「送金したのに商品が届かない」といった取引上の事故がなく、順調に業績を伸ばしている会社を見つけるのが簡単になります。それを成長が見込める有望企業と判断して、事業を拡大するのに必要な融資を申し出ます。こうして同社は金利収入でも収益を上げています。

大手金融業も動き始めた

 フィンテックの注目点は、金融業界に下克上や新陳代謝をもたらす可能性を秘めていることです。

 フィンテックの活用とは、最新の技術によって従来の金融の仕組みや機能を代替するシステムを作ってしまうこと、と言い換えられます。しかも、そのほぼすべてがサービスの効率化、省力化、低コスト化などを実現しています。

 どんなに有名で規模が大きい金融機関であっても、旧来のやり方を踏襲するばかりでは顧客の要求に応えらなくなります。一足飛びに新しいサービスを提供する新興勢力の前に敗れ去る可能性もあります。

 大企業もこうした技術革新の波に乗り遅れまいと、ネットベンチャーと組んだり、自ら技術開発に取り組むようになりました。こうして、フィンテックは今やネットベンチャーだけのものではなくなりつつあります。企業規模や事業内容を問わず、さまざまな企業が入り乱れながら、技術革新が進んでいくことが予想されます。

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