インフレと失業のトレードオフ関係を前提とすると、経済政策の仕事はどちらの痛みをどの程度重視するかを決定することになるでしょう。

 例えば、インフレ率を0に留める代わりに失業率は4%台でも仕方ないと考えるのか、それとも2%くらいのインフレ率は我慢してもらって、失業率を3%以下に抑えるかを選択する…というわけです。

 しかし、このように「フィリップスカーブ上の一点を政策で選ぶ」という政策運営には大きな批判があります。「右下がりのフィリップス曲線」を導いている理屈が、上で説明した賃金の硬直性によるものとは限らないからです。

いままでそうだったから…

 右下がりのフィリップスカーブが導かれるのは賃金の硬直性以外の理由によるものであり、政策の根拠として利用することはできない、という考えから、ロジックとしては間違いがあるかもしれないが、政策利用は可能だという考えまで、経済学者の態度は様々ですが、それは回をあらためて説明することにしましょう。

 ところで、経験則を使う根拠としては、どのような説明がなされるのでしょうか。ごく正直なお話をすれば「いままでそうだったから、これからもある程度そうだろう」という以上に強い説明はない……というのが僕の考え方です。「一度も現実になったことはないが理論上はそうなるはずだ」という理論よりは、意味があるのではないか、と。ちなみに後者の方が確かだと考える経済学者も、決して少なくありません。

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(日経ビジネスベーシック編)

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 新進気鋭のエコノミスト、明治大学政治経済学部准教授・飯田泰之氏による「2017年の経済ニュースに先回り」のほか、「ビジネスワード、3ポイントで速攻理解」「注目ニュースの『そもそも』をすっきり解説」「日経会社情報を徹底活用、注目企業分析」「壇蜜の知りたがりビジネス最前線」などで構成されています。

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