心と頭の両方に訴えかける

 グローバルリーダーに欠かせない英語力の問題についてもお話ししましょう。

 私は正直、英語はそれほど得意ではありません。今でもそうです。ただ、多少なりとも英語力を向上させることができたのは、実は韓国に赴任した時からです。

 英語圏ではない韓国で英語力が向上したというのは不思議に感じられるかもしれませんが、逆に相手も英語が得意でない分、英語によるコミュニケーションの決まったパターンを身につけることができ、非常に効果的だったと思います。

 韓国人の従業員とはお互い、外国語である英語でコミュニケーションをしますから、工夫が必要でした。まず、使う単語は極力簡単で誰でも知っているようなものを選びます。そしてなるべく単純なロジックで話します。このパターンを繰り返し、繰り返し、やっていくうちに、短期間でぐんぐんとコミュニケーション力が上がりました。

 また、意識したのは「スピーク・トゥ・ヘッド(Speak to Head)」と「スピーク・トゥ・ハート(Speak to Heart)」の両方を実行することです。つまり、心と頭の両方に話しかける。こうすると伝わる力が倍増します。情緒ばかり訴えてもダメだし、理論ばかり強調してもダメ。相手を尊重し、認めた上で、きちんとポイントをとらえて相手の頭と心に語りかけると、下手な英語でも理解してもらえます。

 こういうコミュニケーションのパターンを身につけて日本に帰国したら、以前の私の英語力を知っている従業員たちが「桐山さんの英語が上達した」と驚いていました。「特別レッスンでも受けたんですか」と聞かれたこともありますが、毎日、忙しく仕事をしていたので、それどころではありませんでした。今ここで説明したことを毎日、繰り返しやっていただけです。

 私は韓国の前にカナダにも赴任していましたが、その時は残念ながら英語が上達することはありませんでした。韓国の時とは逆で、周囲が流暢な英語を話すので、私もそうしなくてはいけないという感覚に陥り、「流暢に話すためにはどうすればいいか」ということばかり考えていたからです。コミュニケーションは伝えることこそ本質。必要なのはフルーエントスピーカーになることではないのに、違う方向で努力をしてしまったのです。