「叱る」の前に「認める」

 前回もお話しした通り、人間は尊重され、信頼され、認められるとモチベーションが上がります。それがなくて単なる駒の1つとして扱われたら、誰でも「やってられない」「もういいや」となってしまいます。ですから、リーダーはまず部下を認めることが第一。

 「褒める」というのは相手を認めているからこそ出る行動ですが、「叱る」時にも、その前段階に「認める」があるべきだと思っています。

 チームの一員として、戦力として相手を認めた上で、「もっとこうしなくてはいけないね」「この一歩が足りなかったんだよ」という叱り方をするのと、虫けらのように罵倒するのとでは全然違います。認めた上で叱るのであれば、それもまた部下のモチベーションアップにつながるはず。特にマイノリティーの立場にある部下は認めてもらうと気合いが入ります。

 だからリーダーは常に相手を認めることからスタートするべきです。その上で「褒める」「叱る」を使い分けるべきです。相手を尊重し、理解し、認めるということができない人というのは、やはり「器が小せえなぁ」と思います。

 私は叱り方も場面によって変えています。半分冗談っぽく、声のトーンを上げて「いい加減にしないとダメだぞ」と叱る時もあります。「次にやったらお前、終わりだぞ」というニュアンスのことを淡々と語って叱る時もあります。規律の乱れを感じる言動があった時などは、「絶対に許さないぞ」という思いでこのように静かに叱ります。私の場合、大きな声で叱る時より、静かに叱る時の方が、部下は怖いと思うようですね。

 厳しく叱ることもあるトップというのは、社員から必要以上に畏怖の念を抱かれがちです。ですから、私はふだんはなるべくニコニコしているように努めています。こうやってメディアの取材を受ける時も、「笑顔を撮ってください」と頼みます。

「笑顔を心がけています。必要以上に距離を置かれることのない存在でありたい」

 それでも、社内で私にバッタリ会った社員は固まってしまう時もあります。私がエレベーターに乗っていて、途中の階で止まり扉が開いた途端、それまでワイワイ騒いでいた社員たちがピタッと静かになって空気が凍り付く。何となく「社長がいるから乗ってはいけないのかな」という雰囲気になっているのがわかります。そういう時は「おいで、おいで」「怖くないよ」などと言いながら手招きしたり手を引っ張ったりして、無理矢理乗せちゃう。

 もちろん、立場の違いはありますが、必要以上に距離を置かれることのない存在でありたいと思っています。