現地の従業員は半年間、心を開いてくれなかった

 グローバルリーダーが取るべき姿勢について説明してきました。覚えておいてほしいのは、リーダーの姿勢いかんで、ローカルの従業員の仕事に対するモチベーションには雲泥の差が出るということです。

 私がそれを最も実感したのは韓国へ赴任した時です。韓国のP&Gが、自社の2~3倍の規模の韓国企業を買収した直後、私が営業のトップとして赴任しました。

 それまでの歴代営業トップは米国人。いきなり日本人が来たことで、現地の従業員も反発を感じたことでしょう。買収先に勤めていた従業員にいたっては、P&Gのことすらよく知らない状態なのに、突然、日本人が上司になってしまった。「なんでこんなヤツの下で働かなくちゃいけないんだ」という戸惑いや嫌悪感、抵抗感があったはずです。ローカルの従業員は半年近く、私に対して全く心を開いてくれませんでした。

 私は私で何とかリーダーシップを発揮したいと躍起になっていました。今、振り返ると、とにかく自分の意見をぶつけて、相手に理解させようという姿勢が前面に出ていたと思います。これでは心を閉ざした従業員は、なおさら頑なになってしまいます。

 さすがの私も途中で「このままではダメだ」と気づきました。「まずは現地の従業員の意見を聞き、理解しよう」と私の姿勢を変えることにしたのです。

 以来、一緒にランチに行ったり、ミーティングを開いたり、彼らと向き合う時間をつくりました。「なんでも言いたいことを言って」と伝えたところ、現地従業員にもため込んでいた思いがあったのでしょう、どんどん意見や提案が出てきました。ビジネスの進め方、会社の方針、市場の状況など色々です。

 もちろん、私の考えとは全く違う意見もありましたし、理解に苦しむ主張もありました。明らかに間違っていると思うものもありました。ただ、心の中では「相容れない」と思っても、彼らに対しては決して全否定しないよう心がけました。

従業員の意欲と会社の業績は完全に比例する

 とにかくすべて話を真剣に聞き、「考え方が違う」ことを受け止めたのです。まずはこれで彼らのフラストレーションがなくなります。その上で「君たちの意見はわかった。でもこういう考え方もあるよね。どちらの方がより良い結果になるか、考えてみようよ」と投げかけるようにしました。

 そういうやりとりの中で、良いアイデアがポンと出てきて、「それはいいね、やってみよう」と盛り上がることもありました。採用したアイデアは全社を挙げて支援しました。

 こうしているうちに、みるみるローカルの従業員のモチベーションが上がっていきました。雰囲気ががらりと変わり、固く閉ざしていた心の扉が少しずつ開いていくのが手に取るようにわかったのです。私が赴任して5~6カ月後のことです。その頃から、業績もはっきりと上がり始めました。

 ビジネスの現場で働くのは人間です。結果がどう出るかはその人間の心次第です。当初は明らかに「働きたくない」モードで、「なんでこんなヤツのために働かなきゃいけないのか」「どうしてこの会社に尽くさなくてはいけないのか」という思いが如実に表れていたのが、互いに打ち解け、お互いを尊重し、理解し合えるようになると、「少し頑張ってみよう」となったのです。韓国ではまだ収益の規模が小さかったこともあって、その少しの頑張りが明確に数字を押し上げました。

 グローバルリーダーが正しい取り組み姿勢を示すことができなければ、ローカルの従業員はついて来ません。従業員がついて来なければ、会社は良い結果を出せません。つまり良い業績を上げることはできないのです。

 従業員のモチベーションと業績は完全に比例します。どんなに良い戦略を構築したとしても、現地で実行するのはローカルの従業員です。ローカルの従業員に対して、リーダーがどういう姿勢を示すかが、ビジネスの結果を左右することを忘れてはならないと思います。

(構成・小林佳代)