透明性が規律ある行動を促す

 グローバルリーダーの取り組み姿勢で注意すべき第2のポイントは、透明性のある決定をすること。そのためにはデータやファクトなど客観的な評価軸をベースに判断することを習慣づけることが重要です。

 中でもセンシティブなのが人事評価や業績評価です。「この人はきちんと数字を出しているのになぜか評価が低い」ということがあってはなりません。特にマイノリティーの立場にあるローカルの従業員に対しては、データやファクトで透明性の高い評価を下すこと。そうでなければ、「いったいどのように人事が決められているのか」という不信感を醸成してしまいます。

 まず、事前に個人やチームに対する期待値を設定し、本人たちと共有する。そして、どんな覚悟を持ってその目標に向かうかを確認する。その上で定期的に結果を振り返るという手順を踏むことが重要です。

 こうすることで、現地の従業員も「自分が今、どの立ち位置にいるのか」が把握でき、「ここをこう直せばもっと評価が上がる」と理解できます。透明性が高く公平な評価は正しい競争環境の形成にもつながります。

 日本の企業では、事前の目標設定すらされていないことがあります。評価する時にはリーダーが「どうしようかな」などと鉛筆をなめながら考える。最悪の場合、「アイツはどんな要望にもイエスと言って自分に従ってくれた」とか、逆に「アイツは何かと反発してきた」といった“好き嫌い”で評価してしまいます。

 今しがた「日本の企業では」と言いましたが、好き嫌いで評価してしまうことは、実は海外の企業でもしばしばあることです。P&Gのようなグローバル企業にも、まだそういう風潮は残っています。

 外資系企業にありがちなのは、英語が話せる従業員を過分に評価してしまうケース。これでは、しっかりと数字を挙げ結果を出している人ほど「やっていられない」と会社を去りたくなってしまうでしょう。

 ビジネスにはデータやファクトに基づかない一種の勘や経験がものを言う場面があります。ただし、人事評価、業績評価だけは別。勘に頼ってはいけません。

リーダーはローカルのコミュニティにも参加すべし

 グローバルリーダーが気をつけるべき取り組み姿勢で最後に指摘したいのはコミュニティーの問題です。

 日本人はなぜか海外に行った時に、日本人だけが集まるコミュニティーをつくりたがります。現地でリーダーとなるべき人物が、いつも日本から赴任した従業員とばかりつるんでいるのは、どう考えてもおかしな光景です。

 現地の従業員からすると、「どうして自分たちに近づいてこないのか」「日本人同士の関係は特別なのか」と見えてしまう。日本企業にやって来る米国人が、米国人とばかり付き合っていたら、「なんだ? あいつら」と面白くない感覚になるのと同じことです。

 コミュニティーをつくることは悪いことではありません。外国人も母国出身者のコミュニティーをつくっているケースは多々あります。しかし、リーダーであれば、日本人のコミュニティーだけでなく、ローカルのコミュニティーもつくり、参加すべきです。

 私が今いるシンガポールには様々な国籍の人がいます。シンガポール人のコミュニティー、インド人のコミュニティー、中国人のコミュニティー、もちろん日本人のコミュニティーもあります。私はこれらすべてに満遍なく顔を出すようにしています。リーダーとして組織を率いるならば、自分の国籍にこだわらず、公平に接するよう気をつけなくてはなりません。